ホームセミナーセミナーレポート人事戦略フォーラム 2024年5月20日

セミナーレポート

人事戦略フォーラム

「ウェルビーイングに働く」 ~個人の幸せを大切にした働き方とは~

EVOL株式会社 代表取締役CEO 前野 マドカ 氏

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今回の人事戦略フォーラムは、研究者として、そして数多くの企業のウェルビーイング向上を支援されている前野マドカ氏をお招きし、企業が人的資本経営を実践していく上で重要な「ウェルビーイング」について、理解を深めていただくと同時に、ウェルビーイングや幸せを大切にした働き方とは何かについて参加者と一緒に考えました。
以下は講演の要旨です。

1.ウェルビーイングとは

Well-beingとは、広義の意味では“良好な状態”であることですが、狭義の意味では、身体(健康)・心(幸せ)・地域社会(福祉)全てが良い状態であることを表しています。
「幸せ・幸福」という言葉は、様々な企業のトップが使う時代になりました。人的資本経営の第一人者である伊藤邦雄先生も、人的資本経営を推進していくためには、Well-Beingを中心に据えることが最も大切であると述べられています。また、海外の研究結果によると、収益性が高い企業は、他の企業よりも幸福感、目的、仕事の満足度が高く、ストレスが少ない従業員が多い傾向があり、従業員のストレスの軽減よりもウェルビーイングを目指した方が業績との関連性は強いということが明らかとなりました。心も体も社会的にも良い状態が続くことで、生産性が高まり、安定したパフォーマンスの向上につながっていきます。人的資本経営、健康経営、エンゲージメント、DE&I、働き方改革等、各社での既存の取り組みとウェルビーイング経営を繋ぐために、各々の活動をプロットすることで、必要な補填ポイントが見えてくると考えています。
 幸福学「Well-Being Study」は心理学・統計学をベースとする学問です。幸せは伝染し、幸せな人は創造力、生産性、学力が高いことが明らかとなっています。「幸せ」と「健康」は類似しており、幸せになるためには、幸せについての知識を得、幸福度診断を受け、幸せに気を付ける必要があります。幸福度診断「Well-Being Circle」は、一般社団法人ウェルビーイングデザインが提供する、72問の質問から成る34項目の幸福度診断で、自身のウェルビーイング度や、個人及びグループの幸福の形を手軽に計測できる無料サービスです。健康に気をつけるように幸せに気をつけて「幸せ寿命」を延ばす時代がやって来たと言えます。
 幸福感の高い社員は創造性が3倍、生産性が31%・売上が37%高く、また、欠勤率が低く、離職率が低いというデータもあります。更に、幸せ・創造性・多様性の関係性も非常に重要であり、多様性の高いチームではイノベーションが起きやすいということも明らかになっています。このようなことからも、企業においてウェルビーイングが必要であると言えるのではないでしょうか。
 幸せには、長続きしない幸せと長続きする幸せがあります。前者は、”地位財”(金・物・地位)=他人と比べられる財であり、後者は”非地位財”(安心・健康・心)=他人と比べられない財です。後者の”非地位財”のうち、心による幸せ(psychological well-being)を分析し、幸せの心的要因に関連するアンケートを1500名の日本人に行い、その結果を因子分析し、「幸せの4つの因子※1」を導出しました。
※1 幸せの4つの因子
1:自己実現と成長(やってみよう因子)、強み、主体性
2:つながりと感謝(ありがとう因子)、利他、多様性
3:前向きと楽観(なんとかなる因子)、チャレンジ精神
4:独立と自分らしさ(ありのままに因子)、自分軸
感謝を伝え、感謝を受け取ること。また、夢や目標を持ち、多様な人とのつながりを大切にし、前向きに自分らしく生きる人が幸せであると考えています。自身で何か困ったことがある際、部下が悩んでいる際には、何が足りていないのかを上記4つの因子・指標で捉え直していくことが重要です。また、会社やチームにおいては、まず初めに”ありがとう因子=関係の質”から整えた上で、その他の因子=個人の在り方を意識して整えていただくことをお勧めします。仕事・プライベート双方において、「生きがい」と「つながり」の2つは最も重要な幸せの条件です。

2. 個人にとっての幸せな働き方とは

各社のヒントになる企業事例を2つ紹介しましょう。
1社目は、介護事業を展開する株式会社アライブメディケアです。同社では、ウェルビーイング経営のため、以下の3つのポイントを実践し、1年間の取り組みで、生産性が31%・売上が37%増加、離職率も直近一桁台へ低下すると同時に労使トラブルの件数や重大事故・事案も減少するという成果を得ています。
① ウェルビーイングを知る:全社員向けにウェルビーイング勉強会を開催
② 日々のコミュニケーションにウェルビーイングを取り込む:社内SNSで嬉しかったことを共有+必ずレスポンス
③ ウェルビーイングを仕組みに取り込む:人事評価制度に4因子の要素を盛り込む
2社目は、株式会社ポーラです。同社社長及川氏との共著「幸せなチーム結果を出す」(2023年9月出版)では、ウェルビーイング・マネジメント7カ条として、幸せなチームが結果を出す7つのティップス※2を紹介しています。
※2 幸せなチームづくりの7つのティップス
【メンバーとの向き合い方編】
1:対話する・目をつむらない
2:ジャッジしない・正解を求めない
3:執着しない・リセットする
4:任せる・委ねる・頼る
【リーダー自身のあり方編】
5:経験を教訓にする
6:相手を変えるのではなく、自分が変わる
7:愛のループを自分から始める
幸福度と成果の両方を実現するためは、相手を変えようとするのではなく、自らが変わり、自らが見せることがポイントとなります。
ウェルビーイングをつくる栄養素として、体の栄養の他に、心の栄養も必要です。心の栄養とは、言葉や声がけです。「○○さん、ありがとう」「○○さんのおかげで助かった」等、必ず相手の名前を付けて感謝を伝えることが大切です。また、他の人からの言葉だけでは難しい時もあるため、自分で自分のことを褒めて欲しいと思います。これが、幸せに働くためのコミュニケーションのポイントです。
 人それぞれ幸せは異なります。VUCAの時代、世の中が目まぐるしく変化する中、自分自身の軸を大切にしつつ、チームメンバーと共に上手く変化に対応しながら、より多くの方が幸せに働き、幸せな人生を送っていただけることを願っています。

本フォーラム内では、少人数での情報交換会の時間を設け、参加者同士で、ウェルビーイングにおける各社の取り組みの共有や、自分自身のWell-beingや自分らしく働くとは何かについて考えました。最後に参加者一人ひとりが明日からの「行動宣言」を掲げ、本フォーラムは終了しました。

◎フォーラムを終えて

  • フォーラムの内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    ・大変参考になった= 53%・参考になった= 42%・あまり参考にならなかった= 5%・参考にならなかった= 0%
  • 参加者の意見・感想は・・・

    仕事だけでなく、今後の生活や生き方にも活用できる非常に濃い内容のセミナーだった。もっとウェルビーイングについて勉強したいと思った。 参加者の方と意見交換できたことが良かった。シニア社員ひとりひとりのWell-beingを推進していく勇気もいただけた。 参加者との会話の時間もあり大変参考になった。 今回、参加企業様とのディスカッション機会も設けていただくことで、自社と他社の違いなど気づきをいただいた。 参加する前は、ウェルビーイングを実現するにはどんな施策が必要なのか?とちょっと構えていたが、まずは挨拶から、気持ちよく働ける環境を作っていくことがウェルビーイングにつながるのだと思った。 「幸福・幸せは伝染する」というのが印象に残った。人を変えようと思わず、まず自分が幸福を感じること。広めていきたいと思った。 一方的なレクチャーではなく、他社の方との対話の時間があることで、自分自身の理解を深め、新たな気付きを得ることにつながり、非常に有意義だった。ご講演の内容自体も、ポイントを端的にお伝えいただけたこと、また具体的な事例を要所要所で交えながらお話いただくことで、実践のイメージが沸いた。 グループディスカッションで多くの気づきを得ることが出来た。特に2回目のディスカッションは、参加者の方々の経験、実務内容を元にした意見交換が行え、有意義だった。前野先生の講義も、学術的な背景が押さえられており、とても参考になった。 声掛けの際は相手の名前を呼ぶなど、とてもシンプルだが、すぐにできることを多く教えていただいた。また、わがままではなく、自分自身を幸せな状態にすることが大切であることハッとさせられた。 声をかけるということは、意識をしていたので、そこが出来ていた自分をほめることから始めていきたいと思った。また承認・賞賛を受け取るにも力が必要という点はとても刺さった。
  • 登壇者の感想は・・・

    EVOL株式会社 代表取締役CEO 前野 マドカ 氏

    EVOL株式会社 代表取締役CEO 前野 マドカ 氏

    「この度は講演に加え、ご参加の皆さま同士の対話の時間もとることができ、貴重な機会となりました。組織のウェルビーイングを考える前に、まずは個人のウェルビーイングを整えることが、幸せなチーム作りにとって大切なポイントになることを実感していただけたのではないかと思います。最後の行動宣言をぜひ実行に移していきましょう。心より応援しています!」