ジョブ型雇用/ジョブ型人事 これからの展望
コーン・フェリー・ジャパン株式会社 コンサルティング部門責任者 柴田 彰 氏
富士通株式会社 執行役員 EVP CHRO 平松 浩樹 氏
第一生命ホールディングス株式会社 執行役員 人事ユニット担当 山口 仁史 氏
昨今の日本企業を取り巻く内外環境の変化を受け、旧来の日本型雇用システムであるメンバーシップ型を抜本的に見直し、雇用や人事の仕組みを「ジョブ型」に転換する企業が急増してきました。
今回の人事戦略フォーラムは、これまで多くの企業をジョブ型へと転換する支援をされてきたコーン・フェリー・ジャパンの柴田氏、また人事責任者として自社にとっての最適なジョブ型の仕組みを検討し、導入されてきた富士通の平松氏、第一生命ホールディングスの山口氏をお迎えし、ジョブ型雇用/ジョブ型人事のこれからを考察しました。
【PART1】 [基調講演] ジョブ型雇用とジョブ型人事の現在、これから
コーン・フェリー・ジャパン 柴田 彰 氏
ひとつのブームとなったジョブ型雇用/ジョブ型人事への転換も、現在は一段落してきた一方で、日本企業でのジョブ型を巡る論点は、以前にも増して多様化しています。ジョブ型のこれからを見通す上で、まずはジョブ型とは何かを再考し、多様化した論点について触れていきます。
初めにジョブ型を巡る日本企業の現状を、事前に121名の方に回答していただいた当協会のアンケート結果から見ていきます。
この結果から、ジョブ型の仕組みを取り入れている企業は一見して少ないように感じますが、各回答結果を深堀りすると、どの企業もきちんと意思を持って、ジョブ型へ切り替えた事がわかります。ジョブ型導入の目的を見ても、4~5年前に比べ、より本質的な理由が多い事が分かり、一方のジョブ型を導入しない理由からは、トレンドに安易に飛びつかず、きちんと自信・確信を持ってから導入したいと考えている企業や、熟考した結果、メンバーシップ型の方が自社に合っているという結論を出した企業も多いという事が読み取れます。
ジョブ型に関する論点も、技術論が多かった従来に比べ、現在では「社員のキャリアに対する意識をどう変えていくのか」「”人”中心の組織の考え方に180度転換するためには、どうすれば良いか」等、より多様なもの、より本質的なものに変化しています。また、その背景として、ジョブ型の人事制度と日本的な人事制度にズレが生じている事が理由であると考えられます。具体的には、年功や在籍年数を重視した登用や、定期人事異動の温存、ジェネラリスト型のキャリアパスが未だに主流であること、従来通りの新卒一括採用がメインである事などが挙げられます。
次に、改めてジョブ型について考えたいと思います。ジョブ型の目的とは何なのか、大きくは次の5つに集約されますが、
① 処遇の適正化: 仕事や成果に応じた処遇へ見直す
② 高度専門人材の獲得: 最先端のデジタル知見を有する人材を社外から採用
③ 若手の優秀人材の抜擢: あくまで職務適性の観点から、大胆に抜擢
④ 将来有望な社員のリテンション: 社外への流出を防止
⑤ グローバルへの対応: 国や地域を超えた全世界共通の報酬体系の構築
要するに、適所適材の実現が最大の目的であると言えるでしょう。
また、ジョブ型の本質は適所適材にあるものの、「ジョブ型雇用」と「ジョブ型人事」は異なる事象を指している事をご理解ください。「ジョブ型雇用」は適所適材を雇用形態にまで踏み込み実現しようとするもの。必要な時に必要な人数のみ採用し、職務が無くなれば、雇用の保証はないというような発想です。一方の「ジョブ型人事」は、適所適材をめざした社内の人事制度運用のあり方を指します。採用方法の抜本的な見直しにまで必ずしも踏み込む必要はなく、会社の中にある各々の職務に求められる要件に照らした登用や配置・育成が出来るかがカギです。ジョブ型人事制度の基本的な姿として『職務の明確化』『職務の大きさに応じた報酬』『職務の全う度を評価』、これらの三要素を備えていなければ、ジョブ型の制度とは呼べないでしょう。
これから、日本企業がまず考えなければならない論点は、下記の2点です。
① どこまで採用と雇用に踏み込み、適所適材を実現するのか
② 適所適材に向け、社員の配置やキャリアパスをどの様に見直すか
それに伴い、組織のD&I推進や、社員エンゲージメントの向上、ジョブポスティングや社員のキャリア意識の醸成等、それぞれに波及する形で、様々なその先の論点も出てきます。
日本企業のジョブ型への転換は今、新しいステージに入りつつあり、本日ご紹介する富士通や第一生命ホールディングスのように、幅広い観点を包括的に検討し、自社に適した形のジョブ型へ舵を切る企業が出てきています。
【PART2】 【事例紹介①】「ジョブ型」人材マネジメントの導入
~富士通株式会社の取り組みと変化~」
富士通 平松 浩樹 氏
2019年6月の社長交代に伴い、従来のIT企業からDX企業へ変わっていくため、弊社では、外部からの人材採用や社員のリスキリングやマインドチェンジが必要となりました。ジョブ型は、富士通がDX企業に変わっていくためのひとつのツールであり、スタート地点でした。
「私たちは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきます」これは、2020年に策定した弊社の”Our Purpose”です。常に、このパーパスに立ち返り、これで良いのかを考えます。このパーパスを実現するため、人事では「社内外の多才な人材が俊敏に集い、社会のいたるところで、イノベーションを創出する企業へ」というHR Visionを策定。縦割りの組織や同じ顔触れで業務に従事していた従来型から、業種や組織を超えたコラボレーションの実現や、社会課題解決の提案に向けて動き始めました。これらを実現するためには、部分的な人事制度の変更ではなく、ジョブ型人材マネジメントへのフルモデルチェンジが必要であると考え、舵を切りました。過去の経緯や歴史によって決められた仕組みや出来事に縛られる現象を打破することが、ジョブ型の浸透には不可欠であると考えたからです。
会社のカルチャーや人材像を変え、一貫性のある人事制度にするため、次の4つを大きな柱としました。
事業戦略に基づき、組織・ポジションをデザインし、適材をアサイン。戦略を実現するための人材と現有人材とのギャップを埋めるため、外部採用を検討。年功的人事から脱却し、グローバル標準のジョブ型人材マネジメントへ変更。
② チャレンジを後押しするジョブ型報酬制度個人が担う職責を即座に報酬に反映し、より大きな職責へのチャレンジ意欲を喚起するため、職責ベースの報酬体系に変更。グローバル共通の新たな評価制度「Connect」では、立てた目標を達成したか否かではなく、組織ビジョンに如何にインパクトを与えたかで評価。それを「Impact」「Behaviours」「Learning&Growth」の三項目で評価。
③ 事業部門起点の人材リソースマネジメント人員計画の見直しにも着手。これまでは会社の採用人数を決め、各本部に統制的な配分をしていたが、各本部単位の必要人員を決め、採用を含む人材リソースマネジメントは各本部に権限を移譲。自組織のニーズに基づいたタイムリーな採用の実現と、ダイバーシティの向上を目的とした。
また、人材の流動化/多様性の向上、適所適材の実現、オープンでチャレンジングな風土醸成を目的に、ポスティングを大幅に拡大。本人が実現したいキャリアプランを自律的に考え、ポスティングで異動や幹部社員昇格をめざす。ポスティングの実績としては、2021年度は約7,000名の社員が手を挙げる。この施策が浸透し、社員にとっても相当な刺激となっていると感じている。浸透するための施策として、自組織のめざす姿やビジョンが共感を呼ぶように練り上げ、磨く事が出来る場として、「本部長ビジョンピッチ」も実施。本部長がビジョンを語り、他部門からフィードバックを得る事で、より質を高める事が出来た。
キャリアオーナーシップを実現する機会として、様々な研修や挑戦の機会の充実も図る。例えば、学びたいことをいつでも、どこでも学べるプラットフォームとしてのOn demand型教育を導入し、思いやナレッジを共有する組織風土に変革。また1on1ミーティングを推進。上司と部下のコミュニケーションの質を変えるため、優れたマネジャーの行動を見える化し、外部プロからの指導や、インフルエンサーの育成など、工夫を凝らした。サーベイの結果によると、80%以上の従業員が月1回以上、1on1を実施し、その80%以上が有益であると回答している。
私は、ジョブ型に変えることは目的ではなく、手段であると考えています。会社と社員の関係性を変えていく事が様々な施策の1番の基盤です。社員が自律的にキャリアを考え、行動していくことは非常に大切ですが、それには会社からの社員への信頼が必要不可欠です。信頼して任せることと、放任することは別物であり、会社や組織は何をめざしているのか、上司がきちんとサポートする必要があります。「自律×信頼」。実践できる場がある事、会社との信頼関係を築く事が非常に大切だと考えています。
【PART3】 [事例紹介②] 「ジョブ型」思想と伝統的価値観の融合
~第一生命ホールディングスにおける人事制度変革の取り組み~
第一生命ホールディングス 山口 仁史 氏
弊社は、完全に「ジョブ型」へ移行した訳ではありませんが、ジョブ型の制度を取り入れる必要性を感じ、2020年に10年ぶりに人事制度を改訂しました。
第一生命グループでは、創業から変わらず、「一生涯のパートナー」としてお客さまに安心を提供し、大手生命保険会社初の株式化、持ち株会社体制への移行といった変革にも挑戦してきました。2007年より海外進出を果たし、2014年には国内3生保体制を確立。世界9か国で12の生命保険会社を有しています。国内では、「保障」「資産形成・承継」「健康・医療」「つながり・絆」といった、4つの体験価値の提供を掲げ、グループ一体となって、既存の保険領域に留まらない価値提供を拡大しているところです。第一生命グループのこれからとしては、大切なひとを守りたいという絶対的な価値観は変わらないものとしつつ、変革をリードするグループをめざし、変化の激しい世界で選ばれ続けるために、社員自らが変わっていくことが必要であると考えます。変化に対応し、先んじて変革を成し遂げる人財を確保していくため、各層にジョブ型要素を導入し、キャリアの入り口では事業を支える人財の育成と排出を意識しています。この背景には、企業の経営戦略が急速に変化していることに伴い、そこで働く社員に求められるものも大きく変わっていることが挙げられます。会社が何かをしてくれるという期待ではなく、自らのキャリアを主体的に考える必要性があることから、ジョブ型ポストを入れるべきと考えました。
2020年に改訂した社員の人事制度では、外部環境変化の激しい中での「適所適材」の実現、経営戦略を支える人財プールを把握し、獲得・維持し続ける事をめざし、その実現のために、新人事制度には下記3点のジョブ型の要素を取り入れました。
① 職責グレード制の複線化全員がマネジメント職をめざす従前の人事制度から、特定の知見や専門性を極める道を選択可能に。全マネジメントポストの職務内容記述書を整備・公開し、サクセッションプランを作成。専門人財を中心に、キャリア採用を促進。
② 生産性・専門性を評価する仕組みの導入生産性・専門性に応じたメリハリある処遇をめざし、「全社員に求める行動目標」を再定義し、「所属別に求める行動目標」を新設。
③ 社員の自律的成長を支えるマネジメント改革社員のキャリア自律を促すため、マネジメント改革も実施。上司層の理解と協力が不可欠であると考え、上司層の研修や対話(1for1)を通じた成長支援により、部下の自律的な学びとキャリア開発を促進。
また、その他の人事施策として、Myキャリア制度・社内外の副業・Job Posting・リモート型職務 等を展開。海外グループ会社も含め、共通項をどう見出していくか、国・会社を超えた公募制度も開始しました。
一方、2022年7月に改訂した役員報酬制度では、あるべき役員像から議論を開始しました。全社レベルでの変革を担うことが役員の役割であると定義し、変革・戦略の立案・決定者と実行者では、役割・責任が異なると整理しました。実行まで約1年近くかかりましたが、役員の職責も可視化し、職責に応じた処遇体系の検討、職責に照らした評価体系の検討、職責を担える後継者計画 等に取り組んでいます。「知識・経験」「問題解決」「達成責任」の3つの評価により、職務の大きさを測定、役員各々の役割・責任の大きさと発揮度合を反映し、ステークホルダーとの価値共有を実現する報酬体系へと移行しました。
また、弊社の人事戦略における今後の課題は、日本を超えて、グローバルでの求心力をどう高めていくか、グループ経営体制のさらなる高度化と、次の経営戦略を支える体制整備であると考えています。
【PART4】 トークセッション:2社の取り組み事例から「ジョブ型」の本質を考える
[パネリスト]
富士通 平松 浩樹 氏
第一生命ホールディングス 山口 仁史 氏
[モデレータ]
コーン・フェリー・ジャパン 柴田 彰 氏
Q1.日本的なメンバーシップ型とは思想が異なる「ジョブ型」の仕組みを導入するにあたり、人事責任者として最も苦労したことや最も力を入れたことは?
●平松氏:単にジョブ型が流行っているからということではなく、会社としてのめざす姿を実現するために必要であるということを、社員に信頼してもらうことに最も力を入れました。具体的には、制度との関連性を明確にするため、これまで人事が持っていた権限をオープンにするなど、会社としての本気度や覚悟を見せることなどが挙げられます。
●山口氏:会社を取り巻く環境を理解し、社員自身が主体的にキャリアを築いていかなければいけないという意識転換のための取り組みや、間に入る上司の意識転換に、力を入れて取り組みました。特に上司層だけを特別に招集し、経営側の目線に立って会社の現状や環境変化を理解してもらうことに努めました。
Q2.社員のキャリア自律を日本企業の中で実現するために必要な事は?
●平松氏:弊社ではポスティング制度が大幅に拡大している一方で、挑戦する社員と不安がっている社員の二極化も進んでいます。これまでキャリア研修は、入社時と50歳の時のみでしたが、人材の流動化も覚悟した上で、全ての年代でキャリア研修を実施することも必要だと考えています。社内インターンのような仕組みや、組織ビジョンを全社にオープンにするなど、「会社は情報をオープンにするから、社員一人ひとりも自分でどんどん考えていこう」という組織づくりも必要ではないでしょうか。
●山口氏:弊社でも、マネジャー級の職務の内容を全社に公開しています。社員自らが確認してもらう事で、どういう職場なのかを理解してもらう事が出来ると考えます。また、上司との対話の中で、キャリアビジョンを考えてもらうことや、360度評価も実施しながら、育成の状況を図ることも大切だと考えます。
Q3.パーパスやフィロソフィーを組織に浸透させるにあたり、鍵となる事は?
●平松氏:パーパスを“置きモノ”のようなものではなく、「自分ごと化」するため、弊社では個人のパーパスを全員が作るワークショップを実施しています。個人のパーパスを起点として、自分がどう成長したいのかというビジョンを、各自が考えます。パーパスは何のためにあるのか、どうビジネスや成長に繋げていくのかを考える事が大切です。
●山口氏:ミッション・ビジョン・バリューを作成し、各国のCEOと共通の場面で浸透させることに注力しました。特にフィロソフィー・ステイトメントは、作成段階から各国と議論を積み上げることで、自分ごととして捉えることが出来たように思います。そうすることで、浸透度も変わってくると考えています。
最後に、パネリストのお二人から、参加者の皆様にメッセージを頂きました。
●平松氏:全ての会社がジョブ型にすべきという事ではないと思います。何のために、何をめざしていくのか、という事をよく議論する事が大切です。ジョブ型とメンバーシップ型は、必ずしも真逆という訳ではなく、物事を考えるアプローチ方法が違うだけという見方も出来ます。弊社の取り組みが少しでも参考になれば幸いです。
●山口氏:何をめざしたいのかという事が腹落ちすれば、進むスピードも速いと思います。目的が非常に大切です。各社各様の部分もあると思いますが、目的を明確にしていれば、より良い方向に進んでいくと思います。
◎フォーラムを終えて
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フォーラムの内容は参考になりましたか
(参加者アンケート結果から) -
参加者の意見・感想は・・・
富士通と第一生命それぞれが運用するジョブ型を対比しながら話を聴け、とても有意義だった。 人事の世界に絶対解がない中で、率先して新しいことに挑戦する2社の具体的な取り組みが聴け、大変参考になった。 柴田氏からの最近の人事の潮流や、2社の事例を共有していただき、大変参考になった。How(ジョブ型云々)ではなく、やはり企業の目指す姿のゴールを明確にして何をすべきかをその企業なりに考えることが重要であることを、改めて認識した。 柴田氏の分析がシャープで、頭の整理が出来た。富士通の「手段」からではなく、「パーパス、戦略」からというストーリー展開には大いに賛同した。今まで聴いた日本企業の取り組みの中では出色であったと思う。第一生命の歴史を抱えながら、将来に向けて奮闘している姿も印象的で、これは、多くの日本企業に共通したものだろうと思った。 柴田氏の講義は、ジョブ型の要点がとてもわかりやすかった。富士通の取り組みは、IT業界の変化の速さや人材の流動性から来る、経営層や人事トップの強い問題意識と危機意識に基づく変革だと感じた。人事制度改革は、こうしたトップダウンのアプローチがないとスタートもできないし、根付かないと思う。また日本の一般企業には、第一生命の事例のようなメンバーシップ型とジョブ型の適度の使い分けが現実的だと感じた。 富士通の取り組みは、とてもスコープが広く、一貫した思想・目的のもとに設計されており、とても参考になった。平松氏の思考が深く、信念をもって取り組んでいることが伝わってきた。柴田氏の講演も、とても論理的にジョブ型を取り巻く考え方が整理されていて参考になった。 平松氏の「会社の戦略・ビジョンを実現するための組織・人材を確保する目的で、ジョブ型人事制度を導入した」との説明に、腹落ちした。トップから従業員まで、ジョブ型人事制度を導入する目的を一気通貫できちんと共有化することが、この制度を機能させるためにとても重要であると感じた。 第一生命のように、極めて日本的伝統が継承されていると思っていた企業でも、これほどまで覚悟をもって制度の見直しに臨まれていることがわかり、非常に勇気付けられた。 目的を明確にしたうえで、方法論としてジョブ型雇用を導入する、というのは、まさにその通りで、具体的な話でとてもわかりやすかった。 根本的な点だが、会社のミッションや理念のもとに、何がやりたいのか、目的を明確にしないといけないということに、改めて気付かされた。目の前の課題を解決するのがジョブ型雇用、ジョブ型人事制度と安直に考えていたので、今回のセミナーはとても参考になった。 社内の理解浸透方法など、参考にさせていただきたい。当社もジョブ型への移行を視野に入れて良いかなと思った。 各社がいろいろ苦労している様子がわかった。各社の事情にあった制度設計が肝心で、ジョブ型だけではない、サブシステム・制度との連携が必要であるとも感じた。 ジョブ型人事制度をはじめ、こうした新制度への変更や導入に際しては、会社として何を実現したいのかということが非常に重要だと再認識した。富士通と第一生命、それぞれ会社の背景が異なっており、他の人事施策との連動をどのように実施しているかなど、非常に参考になった。 現状のメンバーシップ型がダメだからジョブ型というよりも、まず自社としてどうあるべきか、どうありたいかという答えの先に、ジョブ型人事制度が適しているかということを理解した。 ジョブ型のイメージがバラバラで固定していないため、いつも話が散漫になり拡張しがちだったが、冒頭の柴田氏の説明ですっきりした。今後、ポスティングや中途採用へのかじ切りなど、大胆な改革ができるかどうかが課題。正直、富士通のような思い切りはなかなか難しいと感じたが、とても参考になった。 ジョブという言葉が独り歩きしているように感じる。今日は、ジョブ型雇用とジョブ型人事制度を分けて論じたり、ジョブ型の目的として「適所適材の実現」を、複数の背景と一緒に論じてくれたので、非常にわかりやすかった。 ジョブ型、メンバーシップ型、それぞれの課題、導入に対して会社が持つ意識等、大変勉強になった。富士通のビジョンピッチと、そのお話の内容がとても新鮮だった。 制度設計に際しての技術的なヒントも欲しかった。企業ごとに異なるため、あまりに具体的な内容は難しいかもしれないが、ジョブサイズを検討するときの注意点や想定外のトラブルなど、自社で導入する際の参考としたい。 当社もジョブ型を部分導入しているため、また第一生命と同業種ということもあり、課題や考え方を知ることができ、大変参考になった。また、富士通のHRBPの取り組みが重要との認識を持った。小職もHRBPを立上げ、責任者を務めているが、立上げ間もないこともあり、とても難しさを感じている。今後、各社のHRBPの取り組みや課題、方向性等も知れる機会があればうれしい。 ジョブ型の導入を検討しているため、非常に参考になった。仕組みの前に、ソフト面の意識醸成が成否に関わると改めて認識した。今後のセミナーでは、JOB型への移行、制度導入後の変化、日本の雇用・採用状況とのマッチングなど、事例を含めて紹介してほしい。 ジョブ型になっていくと、ますます社員には自律したキャリア形成が必要になると思う。そのための具体的な施策について、他社の事例を取り上げていただければありがたい。 -
登壇者の感想は・・・
コーン・フェリー・ジャパン株式会社 柴田 彰 氏
「ジョブ型を導入するのが目的ではない。ジョブ型を通じて何を実現したいのかが最も大事」。平松さんと山口さんが仰っていたこの言葉こそ、ジョブ型を考える際の本質だと思います。もう暫くの間、ジョブ型を巡る論争は続くものと予想されますが、皆様には、この本質を冷静に問い続けていただきたいと思います」富士通株式会社 平松 浩樹 氏
「ご参加いただいた皆様が、ジョブ型人事について冷静に受け止めておられる印象を受けました。柴田さんが指摘されたように、日本企業のジョブ型の論点が「技術論」から「多様な論点」へ変わってきているのだと思います。弊社のパーパスやビジョンを起点にしたジョブ型人事への移行が、皆様の参考になったならば幸いです」第一生命ホールディングス株式会社 山口 仁史 氏
「参加者の皆様のご意見・ご質問を伺いながら、改めて多くのことを学ばせていただいたと感じています。人事制度・運用の問題は、各社ごとに閉じた世界ではなく、人材市場全体の潮流と不可分だと思いますので、人事業務に関わる方々との交流が大切と感じています。今後とも、共に高め合っていければと思います」