ホームセミナーセミナーレポート人事戦略フォーラム 2022年2月22日

セミナーレポート

人事戦略フォーラム

創造性は、誰もが発揮できる!
~一人ひとりのアイデア発想特性を活かし、価値を創造できる組織づくり~

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 執行役員   三浦英雄氏

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“従来どおり”が通用しなくなり始めた時代になり、誰もが自分の仕事を自分で切り拓かなければならない場面が増えています。「イノベーション」とは、創造性の高い、限られた一部の人材だけがかかわるものではありません。創造性に対する誤解や先入観をなくし、自分なりの一歩目の踏み出し方を考えてみたいですね。
今回のフォーラムは、ウィルソン・ラーニングの三浦氏をプレゼンターにお招きし、創造性の発揮と組織づくりについて、グループディスカッションも交えながら、皆様と一緒に考えました。

■PART1: 創造的な組織づくりに向けて

フォーラムは「重要な人事/人材開発の課題は何ですか?」という問いかけからスタートしました。参加の皆様に5択で投票して頂いた結果、最も多かった回答は「自律型人材の採用・発掘・育成」でした。
これを受けて三浦氏は、まずご自身が産学連携で取り組んでいる「越境リーダーシップ」プロジェクトについて紹介しました。これまでは、組織の中で与えられた職務を全うし、その中でパフォーマンスを発揮することが評価されましたが、既存の枠組みの中だけでは成長が難しい時代を迎えています。そこで求められるのが「越境リーダーシップ」。これは、既存の枠組みを超えたリーダーシップが起点となり、共創により新たな社会的価値創造を行う行為です。そして、これに対する支援行動が「イネーブルメント」です。
では、社員の誰もが自分らしく創造性を発揮し、挑戦が生まれる組織をつくるために、人事として取り組めることは何でしょうか。三浦氏は、創造的な組織づくりに向けた課題共有として、企業の3 つの成長フェーズについて解説しました。
まず、試行錯誤を繰り返して成功パターンを発見する「フェーズ1(形成期)」。次に、成功パターンを反復し、安定を追求するために改善・効率化が進み、量による管理や制度化・仕組み化が進む「フェーズ2(定常期)」。そして、変化に適応した新たな成功パターンを発見し、価値創造や越境・共創・協働が進行する「フェーズ3(統合期)」。
こちらも参加の皆様にアンケートを行ったところ、大半の方が自社のポジショニングを「フェーズ2後期」と回答しました。これは「既存事業の変革」と「新規事業の創造」が並行する時期であるため、境界を越える共創が求められる大変な時期です。現在、企業の多くがこのフェーズにあると考えられ、創造性を発揮し変化に対応するためにも、組織文化のアップデートが必要になってきます。
価値創造の挑戦者には、変容のステージがあります。ビジネス環境の変化に気付かず、変化を諦めている「ステージ0/無意識」。将来の成長に危機を感じ、課題意識が芽生えるが、具体的なテーマがない「ステージ1/意識」。変革・創造意欲を持ち、アイデアを行動に移し、仮説~検証を実践する「ステージ2/意欲」。ビジョンを持って実現に向けて構想し、行動する「ステージ3/意志」。これも参加の皆様にアンケートを行ったところ、「ステージ1/意識」にある社員が最も多いという回答を得ました。
この後、1回目のグループディスカッションを行い、組織が抱える課題と、社員の創造性を発揮するために取り組んでみたいこと等をテーマに、活発な交流が行われました。

■PART2: 創造性の発揮とは?

「あなたは創造的ですか?」と聞かれたら、どう答えますか? 多くの日本人は「創造性」を「すごいこと」「人より秀でていること」と思いがちなので、ハードルが高いと感じるかもしれません。しかしながら、企業がフェーズ3に差し掛かってきた時には、一人ひとりの自律性・創造性の発揮が重要となります。そして実は、創造性を発揮することは、特定の人だけでなく、小さな成功体験を積み重ねて実感を得ることにより、誰にでもできるのです。
昨今、中期経営計画の中に「イノベーション」という言葉が出てこない企業はありません。イノベーションと聞くと、遠いことや他人事のように捉えてしまう人が多いようですが、イノベーションは「発明」ではなく「新結合」です。そして、顧客に価値を提供する製品・サービス・プロセスを、飛躍的な進歩させることだけではなく、それを逐次的に進歩するアイデアを生み出し、実行していくことまで含まれます。そしてアイデアを発想する思考には、人によって特性があります。アイデア発想特性「イノベーションスタイル」は、次の4つに分けられるのです。
①ビジョニング型: 理想的な結果を求める
②改善型: 既存のものを改善する
③実験型: 要素を組み合わせてテストする
④探検型: 前提条件に疑問を呈する
イノベーションスタイルは通常、28の調査項目で判定しますが、今回は5分ほどでできる簡易診断を実施し、参加の皆様ご自身のイノベーションスタイルを確認しました。自分のイノベーションスタイル傾向を知っていると、自分の強みを発揮しやすいだけでなく、異なる特性の人のやり方を真似ることで、自分の枠を拡げることもできます。つまり、異なる特性をお互いに活かし合うことで、チームとして創造性を発揮しやすい環境が構築できるのです。
イノベーションスタイルの診断結果を受けて、2回目のグループディスカッションが行われました。

■PART3: 社員の主体性と創造性を発揮する支援・環境をつくるためには?
近年の研究から、個人の想いから挑戦が生まれるときには、その挑戦を支え、促す人の存在や環境が重要だということがわかってきました。この挑戦を支え、促す行動体系が「イネーブルメント」です。挑戦する人とこれを支える人(=イネーブラー)との関係が、組織の中でたくさん生まれることで、組織文化は変容していきます。

ここで三浦氏は、前出の「挑戦者の変容ステージ」のステップを再表示。調査によると、組織内では、課題意識はあっても自身の取組・課題が明確になっていない「ステージ1」に属する人がほぼ60%と、過半数を超えることが明かされました(企業によっては100%の場合もあります)。そのままにしておくと、ステージ0〜1とステージ2〜3の間で分断が起こる危険性があります。
では、意志と覚悟を持って事業構想を実行に移していく「ステージ3」の人たちが結果を出すにはどうしたらいいのでしょうか。必要なのは、変容ステージに対応したイネーブルメントを行うことです。価値創造プロセスとしてステージ0→1へ変化するために求められるのは、視座・視野の転換、未来志向の視点など「環境変化の認識」。1→2へ向かうためには、自己認識や枠を越える越境体験など「想いの自己認識」。そして価値創造の挑戦を促進する「イネーブルメント行動」として、0→1では「想いの表出化(Inspire)」、1→2では「アイデアの具現化(Practice)」、2→3では「構想の実現化(Realize)」が必要です。
現在、企業においては全社員がイネーブルメントの対象となっており、ステージ1における「想いの言語化・表明」が課題となっています。自分自身の創造性を発揮しながら、一歩を踏み出す。そういった取り組みができているかを検証してみましょう。
三浦氏は、ステージ1「想いの表出化」に対応するイネーブルメントについて、研究で明らかになった9つの行動パターンを紹介しました。それぞれに、個人の主体性を引き出すための支援行動があり、その取り組み事例を紹介しました。続いて、参加の皆様に事前配布したワークシートを使いながら、「想いの表出化」のイネーブルメントの取り組みに関する共有とアイデア発想をする3回目のグループディスカッションを行いました。

最後に三浦氏は、経済産業省のレポートを引用しながら「人材マネジメントは『管理』から『価値創造』へと向かっている」と述べました。持続的な価値創造を生むためには、中長期的な視点による「事業価値」と「組織文化」を創造することが重要であり、経営戦略と人材戦略が連携した取り組みを行うための指標を設定・可視化し、経営現場と共有することが求められます。誰もが創造性を発揮する組織づくりとは、どんな指標を上げる取り組みなのか、その課題に事業部と連携して取り組むことが、組織をイネーブルメントすることに繋がるのです。
「皆様の取り組みが一社の組織文化をつくり、それが伝播して日本社会全体をつくる。現在は、その分水嶺のタイミングだと思っているので、全力で応援します」と締めくくり、フォーラムは終了しました。

◎フォーラムを終えて

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    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    自律型社員や協創型組織を作るために、各社様も取り組まれていることが分かった。より良い企業、より良い社会を作るために、自分自身も成長し続けたいと強く感じた アイデア発想のスタイルや、行動変容のステージのお話など、これからの組織開発を考えていく中で参考になる話をたくさん聴け、対話セッションも含めて、得をしたセミナーだった
  • 登壇者の感想は・・・

    ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社   三浦英雄氏

    ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社   三浦英雄氏

    「価値創造に挑戦する人に共鳴し支援する人、挑戦を実現しやすい組織文化を創る『価値創造イネーブルメント』の実装が、人事の重要な役割になると思います。社員一人ひとりの想いや創造性の発揮を支援することで、イキイキと生きる社員と組織の相互成長のビジョンを持った人事の方々と対話でき、素晴らしい時間が過ごせました」