日本CHO協会では2021年の1年間をかけて「“自律型人材”が求められる時代の人材開発/人材育成」のあり方を、多面的に考えるプログラムを展開してきました。
今回のシンポジウムはその最終回として、自律型人材と自律型組織を考察する(株)ヒューマンバリュー兼清社長の基調講演と、その実現に向けた取り組みを進めている3社の人事部門の方々をお招きしたトークセッションを企画しました。
“自律”をキーワードにした、これからの人材開発や組織開発に関心のある方であれば、日本CHO協会の会員以外でも参加出来る公開シンポジウムです。是非ご参加ください(参加費無料)。
【プログラムのご紹介】
【PART1】 基調講演 『いまこそ、自律した社員・チーム・組織へと、マネジメントのOSをアップデートする!』
ヒューマンバリュー 兼清 俊光 氏
【PART2】 トークセッション: 『自律型人材と自律型組織に向けた取り組みを通じ、わかってきたこと』
【パネリスト】 デジタルホールディングス 石綿 純 氏
太陽ホールディングス 飯塚 比奈子 氏
西日本鉄道 石谷 賢信 氏
ヒューマンバリュー 兼清 俊光 氏
【モデレータ】 議論メシ 黒田 悠介 氏
【登壇者のご紹介】
株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役社長 兼清 俊光 氏
- メッセージ
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新型コロナウイルスの世界的流行によって、既存のマネジメントシステムの限界が堰を切ったように露呈してきました。
階層構造を設け、戦略や目標の意思決定は上位で行う。決定した戦略や目標は下部組織に分解され、個人が実行できる単位にまで分解が繰り返される。現場で働く人々は、上司であるマネジャーから仕事(タスク)をアサインされ、目標の設定を求められ、その実現に向けて従順且つ勤勉に取り組む。マネジャーはメンバーに寄り添い、しっかり取り組んでいるかを常に観察し、支援の必要性が明らかになれば手を差し伸べて励ます。HR部門は社員が担当する職務の成果を上げるために必要な専門性を高めるための育成機会を設定し、マネジャーは育成計画を立て、メンバーは専門性を高めることに真摯に取り組む。
既知が役立ち、先を見通すことができ、世界を秩序だったものとして捉えられた時代には、このマネジメントシステムが機能していました。しかし、Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧性)のVUCA Worldが、ビジネスを取り巻く環境に現れてきた2001年以降、機能不全を起こし始めました。メンバーは期首に設定された目標の達成に向けた取り組みだけを従順・勤勉に行っているわけではなく、次々と発生する新たな課題やチャレンジ、タスクを、マネジャーがメンバーの業務負荷やケイパビリティ、モチベーションを見ながら、声をかけて依頼する。メンバーも周りの仲間たちの状況が見えるので、自分がそれを担当すべきだろうと感じ、引き受ける。こうして実態としては、インフォーマルでアジャイルな取り組みが現場で行われ、機能不全を起こしていたフォーマルのマネジメントシステムを補完し、限界を先延ばししてきたのです。
ところが、リモートワークが常態化し、日常的な観察やお互いの状況が見えなくなり、補完していたインフォーマルな取り組みが消失し、価値創造に向けた取り組みが生成しなくなりました。加えて、COVID-19によるエンプロイ・エクスペリエンスの変化が実態として明らかになってきました。Microsoft社がコロナ禍でフルリモートになったことを自然実験とみなし、仕事への影響を調べたレポート(*注1)では、グループ外との関係性が希薄化し、グループ内の関係性が強化され、サイロ化が促進し、非公式の協働ネットワークが崩壊し、新規に発生する関係性が減少し、ネットワークの固定化が進んだことが明らかになりました。また、NTTの「在宅勤務が職場の関係性及びメンタルヘルスに及ぼす影響」の調査(*注2)では、在宅勤務が社員を孤立させ、それが原因でメンタルヘルスを低下させ、人間関係の希薄化が仕事の創造性を低下させることが明らかになりました。
そうした中、今回トークセッションの登壇企業の皆様のように、コロナ禍以前から、既存のマネジメントシステムの限界に気付き、自律した社員、チーム、組織へとマネジメントのOSのアップデートに挑戦していた組織もあります。こうした組織は、リモートワークへの移行をむしろ機会と捉え、アップデートを加速し、コロナ禍においても組織コンディションを高め、人的価値創造・事業価値創造・社会価値創造を拡大しています。
本講演では、自律した社員、チーム、組織に変容していくためのレバレッジ(ポイント)を共有します。後半のトークセッションでは、そのリアリティに触れ、参加者の皆様が、自社のこれまでを振り返り、これからをビジョニングし、踏み出す一歩を生み出していただけたらと思います。
(*注1)https://www.nature.com/articles/s41562-021-01196-4?fbclid=IwAR1jUmCGRlHV4zdGUEhLsmTam1S01G7k6bwmEF4HRDDIjN9r6-Ox-XhByDY#Sec11
(*注2)https://www.interaction-ipsj.org/proceedings/2021/data/pdf/INT21001.pdf - プロフィール
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1991年より(株)ヒューマンバリューにおいて、人々・組織・社会の「より良い未来」に向けて、人材開発と組織変革の世界的潮流を踏まえ、現場の知識・経験を取り入れ、クライアントとの協働・共創アプローチによって、大規模組織の全社変革をはじめ、多くの組織の変革プロセスをデザインし、実行・支援している。また「プラクティショナー養成コース」を通じて、コンサルタントやファシリテーターの日本での相互研鑽に取り組んでいる。
株式会社デジタルホールディングス グループ執行役員CHRO 石綿 純 氏
- メッセージ
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当社グループは、コロナ禍でいち早くリモートワークの導入や社内業務のデジタル化を推進してきました。それと合わせて、事業ドメインやビジネスモデルの変革も始まりました。「新しい価値創造を通じて産業変革を起こし、社会課題を解決する」というパーパス実現のためには、社員一人ひとりの自律、それに伴った組織の自律が、必須の状況になりました。特に内向き思考の社員が多い中、「個の解放」や「内発的動機」、「多様な好奇心」に注目し、まずは次世代リーダーを中心に、実現したい未来に向けて検討する場を、昨年から設けています。その取り組みをグループ内で共有する「シェアリングサミット」を経営陣参加のもとで、昨年同様、本年も12月に開催します。小さな取り組みですが、少しずつ新しい兆しや、“情熱オーナー”として事業開発を企画するメンバーも出始めています。
- プロフィール
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1992年リクルート入社。求人広告営業部門、人事部門を経て、2013年スタッフサービスホールディングスへ。2015年光通信人事担当役員。
2018年オプトホールディング(現デジタルホールディングス)へ入社し、現在に至る。
太陽ホールディングス株式会社 人事部長 飯塚 比奈子 氏
- メッセージ
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太陽ホールディングスは、電子基板に使用されるソルダーレジストという製品で、世界トップのシェアを誇る化学メーカーです。急激に変化する社会やビジネス環境に対応するため、2010年に組織をホールディングス化し、総合化学企業へと舵を切りました。
事業の拡大・多角化に伴い、社内には多様な人材が急激に増加し続けており、ここ10年ほどで国内の従業員数は約4倍、海外では約2倍になっています。経営理念に掲げる「楽しい社会の実現」を目指し、各事業会社では独立性を重んじた経営を行い、各職場では自律的な事業運営による成長を目指してきました。
こうした変化の中、今まで以上に自律型人材に溢れる組織に変容すること、また当社の成長を支えた企業文化を良い形で未来につなげる必要性が高まり、2019年より「未来共創イニシアティブ」という取り組みを開始しています。
この取り組みは、グループ全体で共通の価値観を言語化し共有する「太陽バリューの創造」と、各職場の実践の中から個人と組織の変容を生み出す「未来共創ミーティング」に大別されます。
「太陽バリューの創造」では、経営陣と従業員が共に創造プロセスに参加し、多くの対話を経て、過去から私たちが大切にしてきたことの再確認と、未来のために獲得したい価値観を紡ぎ出しました。2021年10月1日にリリースし、現在は、一人ひとりが太陽バリューを体現することで、社内外から「太陽らしい」と自然に表現される状態を目指した取り組みを開始しています。
「未来共創ミーティング」は、組織における関係の質を高め、個人のグロースマインドセットを育み、より強い個人・より強い組織となることを目指す取り組みです。3年目を迎えた今年は、国内グループ6社、44チーム、507名が参加し、各職場で取り組みを進めています。 - プロフィール
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2007年にリクルート(株)入社。商品企画・マーケティング等を経て、人事へ異動。次世代幹部候補育成プログラムの設計や、制度関連業務を通じて、中長期的な人材開発に関わり、人事の奥深さに目覚める。
その後、太陽ホールディングス(株)へ入社。人事業務全般を統括する他、M&Aにおける人事PMIや全社バリューの策定などを担当。2021年6月より太陽インキ製造(株)取締役。
西日本鉄道株式会社 人事部 人材開発課長 石谷 賢信 氏
- メッセージ
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変化が益々激しくなるビジネス環境において、今後も社会に必要な存在であり続けるためには、「変化に適応し、新たな価値を生み出し続けられる人材やそれを育む組織の文化を創っていくこと」が不可欠であると考えています。
そうした背景から、当社では企業文化の変革にフォーカスを置いた「POT3.0(Project for Our Tomorrowの略)」という活動に取り組んでいます。2017年にプロジェクトチームを立ち上げ、たくさんの社内メンバーと、西鉄がどういう企業文化をつくっていくべきかの議論を重ねてきました。2019年には、自律型人材や自律型組織の実現に向けて「目指す企業文化」および必要な環境づくりのための「実行プラン」を策定し、現在も取り組んでいる最中です。
具体的には、成長を促すフィードバックの実現に向けたPOTミーティング(1on1)の展開、心理的安全を醸成できる管理職の育成、横断的な対話の機会としてのワールド・カフェの展開、新規事業を志向したイントレプレナー制度の導入、部門横断チーム&リーダーによる自律的なカルチャー創造、全社的なカルチャー・サーベイの展開など、多岐にわたる取り組みを推進しています。
まだまだ活動途中ではありますが、背景にある想いやチャレンジの状況、活動する中での苦労ややりがいなどのストーリーをご紹介します。またトークセッションでご一緒させて頂く皆様の取り組みも伺いながら、ぜひ意見交換をさせてください。 - プロフィール
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2004年西日本鉄道(株)に入社。主に企画系の部門を経験。これまで、グループ会社の収支構造改革、本社移転を契機とした本社働き方改革・ペーパーレス改革など、主に社内の課題解決のためのプロジェクト業務に従事。2020年より現職。持続可能な「組織」と「個」の成長を実現するため、組織風土改革や人材育成に取り組んでいる。
議論メシ 主宰 黒田 悠介 氏
- プロフィール
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新しいキャリア論『ライフピボット』の著者。問いでつながるコミュニティ「議論メシ」を主宰。対話で課題を解決する「ディスカッションパートナー」としても活動。以前は経営者やキャリアコンサルタント、フリーランス研究家を経験し、キャリア論を発信し続けている、メガネをかけたボウズ。
【開催日時】
2021年11月26日(金)14:00~16:00(途中休憩あり)
【参加にあたってのお願い】
本シンポジウムは、感染症防止策としてZoomを活用したオンラインセミナーです。
ネットワーク環境を整えた上でご参加ください。