“企業の枠”を越えた、多様な人材育成/人材活用
関東経済産業局 地域経済部 社会・人材政策課長 志村 典彦 氏
サントリーホールディングス株式会社 ピープル&カルチャー本部 斎藤 誠二 氏
株式会社パソナJOB HUB ソーシャルイノベーション部長(兼)事業開発部長 加藤 遼
一般社団法人つながる地域づくり研究所 代表理事 一井 暁子 氏
広島県公立大学法人 叡啓大学 教授
県立広島大学大学院経営管理研究科 教授 早田 吉伸 氏
昭和女子大学 ダイバーシティ推進機構 キャリアカレッジ学院長 一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事 熊平 美香 氏
今回の人事戦略フォーラムは、人材開発やキャリア開発にとどまらず、ESG・SDGs・社会貢献・地方創生・官民交流等の様々な目的を持って、出向・複業(副業・兼業)・留学・インターン・プロジェクトワーク等の手法により進められている、企業の枠を超えた「越境体験/越境学習」について、産・官・学から6名の登壇者をお招きし、様々な取り組み事例をご紹介しました。
以下は登壇者の皆様の講演の要旨です。
【PART1】 人的資本経営推進に向けて「地域の人事部」が果たす役割と期待
関東経済産業局 志村 典彦 氏
1.人的資本経営の重要性
人的資本経営とは、これまでの「人」へ投じる資金=費用(コスト)という考え方ではなく、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
人口減少・少子高齢化、産業構造の急激な変化等、企業や個人を取り巻く環境は急速に変化しています。新卒一括採用・終身雇用等の日本型雇用慣行は、事業環境の変化に伴う経営戦略の方向性の変化により、「人材戦略と経営戦略の乖離」を浮き彫りにしてしまいました。
こうした状況を踏まえ、今まさに自社の人材戦略を見直し、従来の人材マネジメントから人的資本経営へとシフトする必要があります。そのためには、自社の企業理念や存在意義(パーパス)を明確化した上で、企業文化として定着させること、自社の価値創造の源泉である「人」に投資すること、「人材戦略」と「経営戦略」を連動させることにより自社の価値を高めていくこと等が重要です。また、今後の働き手と組織の関係性は「閉鎖的」な雇用コミュニティから「選び、選ばれる」関係に変化していきます。そして、これまでの自社内への囲い込み型ではなく、企業間での出向や兼業・副業の推進等、ひとつの組織を越えてメンバーの出入りがある、多様性のあるオープンな関係に変えていくことが求められます。
2.地域企業の人的資本経営を推進する「地域の人事部」
日本の中小企業では、人事部門を経験した経営者が少なく、人事部門には専任の人事・採用担当者がいない等、人的資本経営に取り組む体制が整っていないのが現状です。中小企業で人的資本経営を推めるためには、1社だけでは限界があり、自治体や地域の支援機関の力、複数の支援機関の連携、地域が一体となった推進が必要となります。
こうした背景から、地域企業の人的資本経営推進のパートナーとなる「地域の人事部」が発足しました。「地域の人事部」は、地域の人材に関するプラットフォームとしての役割を果たすことを目的にしており、多様なステークホルダーが関わることで様々な施策を実行することが出来ます。新たな支援ノウハウの獲得や実現、人材確保・育成・定着、意識啓発の相乗効果等、1つの機関や企業では成し得ないことを実現することが可能となるのです。
今年度は8つの自治体において、①「地域の人事部」の立ち上げ~協議会の設立 ②地域企業の外部人材活用支援 ③若者人材の定着支援 等を実施しました。「地域の人事部」によって、地域・兼業副業人材・送出企業の各々に、経済的な価値だけではなく、活動的な関係人口・コミュニティの創出、心豊かな働き方やライフスタイルの実現、地域経済社会のDX推進等、様々な価値を提供することが出来ます。
3.「地域の人事部」と大企業の連携に対する期待
人的資本経営を推進するためには、経営戦略実現に必要な人材を質・量ともに最適化させることが必要な一方、約3割の企業では人材の確保・育成が出来ていないというのが現状です。こうした状況下で、個人のリスキル・学び直しの支援や、従業員がやりがい・働きがいを感じて主体的に業務に取り組むことが出来る環境を作り上げることが必要です。したがって画一的なキャリアパスや年次別の研修ではなく、兼業・副業等の社内外を含めた多様で柔軟な就業環境・機会を提供すること、多様な個人一人ひとりに向き合い、価値創造を最大化することが求められます。
「地域の人事部」では、地域中小企業と兼業・副業人材とのマッチング事業(複活)を実施しています。今年度のマッチング事業に参加した人材の属性を見ると、40~50歳代の首都圏の会社員が多く、また参加動機としては金銭的な報酬よりも、やりがいや新たな出会い・繋がりを求めている方が多いという結果となりました。企業としては、従業員のモチベーション向上・スキルアップ・生産性向上等に期待をしており、越境学習や兼業・副業等に取り組んでいる企業も多い状況です。このように、今後の人的資本経営の推進においては、都市部大企業と「地域の人事部」の戦略的な関係構築が有効ではないかと考え、来年度は実証を行う予定です。
【PART2】 地方創生への貢献~シニア人材の可能性~
サントリーホールディングス 斎藤 誠二 氏
当社では、現在10名の社員が全国の自治体で活躍しています。2020年に「民間専門人材の市町村への派遣に関する支援」の説明を内閣府で受けた際に、これは人を通じた「利益三分主義」であり、世の中のお役に立てるのではないかと感じたと同時に、企業の枠を越えたオープンなキャリア構築に繋がっていくことを確信しました。
当社では自発的な離職率が非常に低く、個人のキャリア形成を会社に委ねている社員も多いのではないかと考えていますが、私達は時が来れば誰しもが、メインの雇用企業を離れるのですから、人生100年時代の到来により、開かれたコミュニティに踏み出す時期が必ずやって来るわけです。
このことからも、内閣府が進めるこの仕組みは、新たなキャリアパス創出の絶好の機会になるのではないかと考え、社内イントラネットに内容を掲載し、地方創生を支援する人材を公募しました。単なる労働力不足の解消ではなく、市町村長の補佐役として責任のある立場で役割を担ってほしい、職員の育成指導にもあたってほしいというご要望も多いことから、ある程度の経験を積んだ45歳以上の社員を公募の対象にしました。応募時にはエントリーシートに自身のキャリア構想を記入してもらい、たくさんの応募者の中から初年度は3名が決定しました。当初2年の契約だったところ、自治体から契約期間の延長希望を頂く例も出てきて、活躍してくれているからこそだと感じています。社内で開催した出向者達の座談会に200名もの社員が参加したことからも、非常に多くの社員が関心を持っていることも分かりました。
全国の自治体で活躍している社員は、地産品・名産品のブランドマーケティング、移住・定住のための広報・プロモーション、市民の方の健康づくり等、様々な業務に従事しています。非常に責任のある仕事を任せてもらっている一方、現実としては、自治体と民間企業の仕事の進め方が大きく異なるため、皆さん非常に苦労もしています。こうした環境であるからこそ、異なる文化に適応できる力・コミュニケーション力・信頼関係を築ける力が必要となりますし、それ以上に公募であるからこその「強い意思」が彼らを支えていると感じます。彼らに聞くと、「新しいことに挑戦出来ている喜びや何かを提案したときに感謝されることにやりがいを感じていて、専門知識以上に、こうしたことが、お役に立てる大事な要素ではないか」と話してくれました。
地方自治体にて企業のシニア人材が活躍することは、日本全体にとって大きな価値があると思います。シニア人材の豊富な経験やスキルは、自治体の悩みの改善に大いに役立ち、また送り出し企業にとっても、本人にとっても、チャレンジすることが成長に繋がり、「迷えるシニア」に勇気と刺激を与えることが出来ます。そのためにも「公募」により自らの意志で取り組んでもらい、また会社として安心してチャレンジ出来る環境を構築し、出向者の日常・戻り先のケアをすることで、シニア層のロールモデルにしていきたいと考えています。
【PART3】 地方での越境学習を通した、次世代リーダー・イノベーション人材の育成
パソナJOB HUB 加藤 遼
1.次世代リーダー・イノベーション人材の育成について
デジタルリテラシー・グローバルマインドセット・問題解決能力・サステナビリティ意識。これらの特徴を持つ次世代リーダー・イノベーション人材が増えていくことで、既存事業は変革され、新規事業が創造されていきます。
次世代リーダー・イノベーション人材には、社会的価値の視座や長期視点のあるべき姿からのバックキャスティング、市場と顧客を重視し、権限移譲された経営者・責任者としての即断即決が今後求められてくると考えます。
では具体的にどのようにイノベーション人材を育成していくのか。様々な観点がある中で、特に価値観や立場が異なる多様なステークホルダーとの協働経験(越境学習)やSDGs、ESG、人権等のリアルな課題との接点により、「視座」を高めていくことが重要だと考えます。
2.地方での越境学習について
地方での越境学習は、人材育成における選択肢のひとつではないかと考えます。その効果として、多様な文化の理解と尊重・専門知識の拡大・ネットワーキング・組織の活性化・自己成長・問題解決能力の向上等が挙げられます。
当社では実践型PBL(Project Based Learning)プログラム『JOB HUB LEARNING』を開始しました。「実践的な学びの機会が欲しい」「事業を通じた社会課題解決に関心のある都市部組織や外部人材と協働して、経営課題解決やイノベーション創出に取り組みたいのだが」という地域企業や団体をマッチングし、プログラムを運営しています。
このプログラムの特徴は、meet Up(出会い)・inspiration(刺激)・experience(体験)の3点です。またPBLのプロセスとして、①Input(チェンジメーカー・セッション・地域体験)②Ideation(個人・チームワーク)③Output(個人・チームプレゼンテーション)④Action(既存事業変革・新規事業創出・未来戦略企画等)を設計しています。これまでの事例としては、釜石市における震災復興からの人材育成プログラムや、徳島県における地域創生×SDGsイノベーションプロジェクト等が挙げられます。今後も、企業側のニーズと地域のニーズをヒアリングしながら、プログラムを企画し実践していきたいと考えています。そして一連の取り組みを通して、地球や社会の中での個人・組織の存在意義や使命・役割の再発見が出来るような機会を提供し、結果として人の可能性と創造性を最大化すると同時に、企業の次世代リーダー・イノベーション人材の育成に貢献できればと考えています。
【PART4】 地方との関わりで生まれる、自己内省と新たな選択肢
つながる地域づくり研究所 一井 暁子 氏
「つながる地域づくり研究所」では、全国の自治体の現場の声を背景に、都市部企業の実情やニーズを伺い、事業を立案しました。実際に自治体側からは「官民連携に取り組みたいが、民間企業との接点やつながりがない」「行政だけ、地元だけでは、発想やアイディア・知見などに限界がある」といった声がありました。一方、都市部の民間企業からは「社外との交流機会や越境体験を社員に提供したい」「民間企業と取り組みたいと考えている自治体があることを知らなかった」という声がありました。これら双方の声を踏まえると、企業にとっても社員の人材育成・キャリア開発・キャリア自律支援や、地方創生・SDGs等の社会貢献活動の推進にもつながる機会提供となると考え、当事業を立案しました。
具体的には、都市部の民間企業と地方自治体を「組織と組織」でマッチングします。民間企業の社員の方々と、市町村の職員や住民の方々が集う『放課後企業クラブ』という場を提供し、コーディネートやファシリテートをしながら伴走します。放課後企業クラブは、終始フラットに、対等な立場で双方向の対話プロセスを重ね、一緒に創り上げていく”共創の場”という意識を大切にしながら取り組んでいます。初年度(令和3年度)には、全国で15のプロジェクトが始動しましたが、今年度は新たに18のプロジェクトを展開しました。
放課後企業クラブの中では、主にシニア層にとって気付きや新たな活躍の場を見出すきっかけとして「セレンディピティプログラム」を提供しています。セレンディピティプログラムには、約2カ月の期間、2週間に1回のペースで、オンラインと現地訪問のセッションを取り入れています。古民家の活用方法や廃線鉄道の観光資源化等、取り組むテーマも多様性に富み、商店街や道の駅・障碍者の就労支援施設等、その現場も多岐に亙っています。こうしたプログラムを通じて、シニアの皆さんに気付きや学びを得ていただくこと、その先にご自身の活躍の場を見出してもらうことが目的です。参加者からは「今まで考えたことがない課題について理解を深め、皆で考えることができたのは、今後の私自身のキャリアを考える上で、何かしらヒントになると思う」「地域活性化がテーマだったが、自分自身の活性化も必要だと気付いた」といった様々な声が寄せられました。こうした越境体験が、自分自身を見つめ直し、自身の強み・弱みや次の活躍の場を見出すことに繋がっているのではないかと感じています。
【PART5】 大学を核とした、地域と企業の連携の試み ~地域プラットフォームとしての大学の実現に向けて~
叡啓大学/県立広島大学大学院 早田 吉伸 氏
1. 自己紹介と私の越境体験
25年間の民間企業での経験が、私のキャリアのバックボーンとなっており、その中で経験した政府への出向や、個人で参加したNPOや大学での活動等の「越境体験」が、私自身のキャリア育成やキャリア自律に繋がったと感じています。
2. 広島における人づくり
大学は従来、研究し教育を行うということが主たるミッションですが、近年では、それに加えて「地域再生の核」「大学・社会の知的基盤」としての役割を期待されており、めざすべき大学像が変化しています。こうした中で、地域社会の課題を色々なステークホルダーと一緒に、プロジェクト型で考えていく『PBL(Project Based learning)』が着目され、地域の活性化や人材育成の面でも役立つということで、「地域の知の拠点」において、国が推奨し始めました。
こうした社会や大学の位置づけの変化の中で、私達は「広島の人づくり」を考えて来ました。広島県は「ひろしま未来チャレンジビジョン」の中で、『人づくり』がその後の生活や地域の基盤・経済を活性化するための重要なベースになってくると、戦略の中で謳っています。
ではどのように新しい『人づくり』をしていくのか。これまでは「何を知っているか」が重要でしたが、これからは「知識を活用しながら、新たな価値を生み出す」ことが求められます。
そのため広島県では、生涯にわたり主体的に学び続け、多様な人々と協働して新たな価値創造が出来る人材の育成をめざし、幼児から大学・社会人まで、各段階に応じた取り組みを展開しています。学び直し・リスキルという観点から、2016年には社会人向け大学院として、県立広島大学経営管理研究科を設置し、またグローバルリーダーの育成という観点から、2019年に中高一貫校である叡智学園を開校しました。こうした流れの中で、教員だけでなく様々なステークホルダーの方と共に、学生を育てていくというコンセプトのもと、新たな大学の設立に向けた動きが始まりました。
3. “22世紀型大学”叡啓大学の取り組み
叡啓大学は2021年4月に開学し、22世紀型大学として、社会に新しい価値を与えるソーシャルイノベーターやチェンジエージェントを育成することを目的としています。教員だけが教育をするのではなく、社会環境の中で学生を育て、学生が育つことで、地域社会も変容し、活性化してもらうというコンセプトの大学です。学生たちは4年間で多様な知識を学びながら、それを実際の社会課題の現場でどう活かしていくのか、PBLのプロジェクトを通じて知を統合し自己成長していきます。地域企業や行政・NPO等、多様なステークホルダーの皆様との共創こそが、このプロジェクトの根幹です。また、県内外の企業・行政・NPO・国際機関等の方々が学生と連携しながら、共創の空間を作り、お互いに越境をしながら学び合うことを目的とした、実践教育プラットフォーム協議会も運営しています。
4. 今後の構想:企業人材との連携
企業や地域の皆様の越境を通した学びによる成長が、学生とのプロジェクトに活かされ、学生の成長が企業の皆さんにもフィードバックされるスパイラルを作りたいと、私達は考えています。それによりイノベーションが生まれ、広島自体が越境の空間になるのではないでしょうか。企業の皆様にはぜひPBLを通じて広島の地域に越境して頂きたいと考えております。また今後は、企業の皆様が特任教員として、越境しながら学びの空間を作っていただくような計画も立てています。
広島県が大学を通じて、首都圏の皆様にとっての越境ロールモデルになればと考えています。
【PART6】 越境学習の価値 ~幸せな社会づくりのための共創力~
昭和女子大学/21世紀学び研究所 熊平 美香 氏
1. 越境学習とリフレクション
「リフレクション」とは、自己を客観的且つ批判的に振り返る行為です。前例のない時代である現代、これまでどおりのやり方や、ものの見方をそのまま適応するのではなく、批判的なスタンスで、経験から学び、考え、行動することが重要であり、そのためには「リフレクション」が不可欠であると言われています。
また「リフレクション」を行う上で欠かせないのが「対話」です。自己内省し、評価判断を保留にして多様な世界に共感することで、自分の枠の外に出ることが可能になります。私は越境学習の最大の魅力を驚きや違和感との出会いにあると考えており、その意味でも「リフレクション」と「対話」は、学ぶ力として非常に重要です。
その力を高める上で欠かせないものが「メタ認知」です。メタ認知とは、認知(=人間が何かを知る・理解する・学ぶ過程)していることを認知することです。越境学習での様々な学びに出逢う際に、自身が何をどのように捉え、どう感じているのかを俯瞰し、メタ認知が出来ると、学びに変えていくことが出来ます。メタ認知にはメソッドがあり、以下にある認知の4点セットを活用すると、簡単にメタ認知力を高めることが出来ます。
① 意見:あなたの意見
② 経験:その意見に関する経験(知見)は何か
③ 感情:その経験には、どのような感情が紐づいているか
④ 価値観:そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観は何か
私達は、経験を通してものの見方を形成しており、それは「メンタルモデル」にも関連していると言われます。「メンタルモデル」とは、一人ひとりが持つ世の中の人や物事に関する前提、当たり前に思っていることです。越境学習は、私達が当たり前と思っていることとは違う世界に簡単に出逢える素晴らしい機会であり、違和感や驚きのメタ認知が豊かな経験へと繋がります。
これから越境学習をされる方は、是非この認知の4点セットを持ち、越境学習に取り組んでいただきたいと考えています。
2. 他の登壇者の方からの学び
本日の5名の登壇者の方々の取り組みから、以下の4点を学びました。
(1) ホリスティックな存在
企業の中にいると、ポジションや役割で自分自身を表現してしまいがちですが、越境学習の場にそれは通用せず、むしろホリスティックな人間として存在することが、可能性を広げることに繋がると考えます。
(2) 自己理解の深化
越境学習により、自己の強みや個性を活かすことが自分らしさの発見に、自己の生き方を振り返ることが自己のパーパスの発見にそれぞれ繋がっていく。そして自分らしく生きるためのヒントを得ることが出来ると考えています。
(3) 器の拡大
越境学習では、企業内にいるだけでは出逢えない多様な人々と交流することで柔軟な思考を持つことが出来、多様な人々との共創によって、自身の枠や器を拡大することが出来ると考えます。
(4) 新しい価値創造
同質性が強い企業の中だけでなく、多様性のある地域の中でフラットな関係で共創していくことは、社会問題の解決に繋がっていくと考えています。多様性を活かし価値を創造していく人が増えていくことは、社会にとっても個人にとっても、越境学習の最大の魅力ではないでしょうか。今の時代の閉塞感を打ち破るものが、越境学習です。多くの方が、前例を踏襲せず、新たな観点で多様な人達と価値を共創していくような社会が実現していくことを切望しています。
◎フォーラムを終えて
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フォーラムの内容は参考になりましたか
(参加者アンケート結果から) -
参加者の意見・感想は・・・
地域・自治体・大学など、様々な越境体験の提供方法を聴くことができたが、いずれも新しい価値創造や自己の成長に繋がるプログラムであり、たいへん参考になった。 新しい発見があり、とても良かった。これらの施策により、労働市場のミスマッチが少しでも解消できればと思う。 企業の枠を越えた地方や大学での経験は、キャリア形成の節目で視野や視座を拡げることに繋がる。このような活動に積極的に取り組んでいるサントリーホールディングスの懐の深さに感心した。 サントリーホールディングスの取り組みは、手挙げ式の効果もあって当該社員がイキイキと活動されているとのことで、とてもうらやましい。知見だけでは測れない「宝」を自社に還元しているのだと感じた。 特にサントリーホールディングスの地方自治体への派遣(出向)は、本人のモチベーションアップは勿論のこと、企業としての価値を測る指標にもなる素晴らしい取り組みだと思う。 越境学習の場についての情報収集をしており、大変勉強になった。 越境学習の機会が既に様々あることを、本日学ぶことができた。紹介された事例のいずれも、まだまだ歴史の浅い取り組みなので、互いに連携できるところがあれば、今後さらに進化・発展していくのではと思った。 越境学習は今まであまり勉強していなかった分野で、たいへん参考になった。早速、自社の人事施策に活かせるかどうかを検討してみたい。 本日は時間が無かったが、登壇者同士のディスカッションや意見交換も実現できたら、更に興味深い議論が聴けるのではないかと思った。 今回のテーマは、これからも実例が続々登場すると思われるので、ぜひ継続してフォローアップの機会を設けてほしい。 -
登壇者の感想は・・・
関東経済産業局 志村 典彦 氏
「経済・社会環境が急激に変化する中で、人材に求められることや人材の育成方法も変化していますが、本フォーラムに参加し、その解決策としての越境学習の有効性を再認識しました。そのフィールドとなる地方と人材を繋ぐプラットフォーム等の環境整備を、官民が連携し進めていきたいと思います。ありがとうございました」サントリーホールディングス株式会社 斎藤 誠二 氏
「『若さとは、心の持ちようを言う』ということを、あらためて感じました。慣れ親しんだ心地よい空間に安住するのではなく、異なる環境で新たなチャレンジすることこそ、人生100年時代にふさわしい心の持ちようなのだと思います。そうした事例や実例を今回共有できたことは、大きな意義があったと感じました」株式会社パソナJOB HUB 加藤 遼
「VUCAの時代において、既存事業の変革や新規事業の創造を担う次世代リーダーやイノベーション人材の育成が求められています。組織や地域を越境して、多様な人材と協働しながら、プロジェクトやビジネスを通じて、地域の経済活性化や社会課題解決に取り組むことは、未来を創造するリーダーにとって最も貴重で重要な経験です」つながる地域づくり研究所 一井 暁子 氏
「貴重な機会をいただき、ありがとうございました。民間企業で様々な経験を積んでこられたシニア社員の皆様に対して、①知見や能力を、地方創生の現場で発揮し、活躍していただける機会の提供 ②その前提となる気付きや変化のきっかけを得る「越境体験」の提供 に引き続き取り組んでまいりますので、今後ともよろしくお願い致します」広島県公立大学法人 叡啓大学・県立広島大学大学院 早田 吉伸 氏
「本学の取り組みについて関心を持って頂き、ありがとうございます。私達は『地域の知の拠点』として、企業(人)と地域をつなぐ役割を担っていきたいと考えています。この取り組みが皆様の越境の機会となり、キャリアの育成・開発・自立に貢献できれば幸いです。私たちの取り組みに関心があれば、ぜひご連絡下さい。よろしくお願いします」昭和女子大学・21世紀学び研究所 熊平 美香 氏
「驚きや違和感に遭遇する越境体験は、学びの宝庫です。リフレクションを行うことで、自己理解を深め、自己の器を大きくする機会になります。また越境体験には、個人の人生を豊かにするだけでなく、多様性を活かし価値を生み出す共創力を高める効果も期待されます。越境学習を、ぜひ多くの皆さんに体験して頂きたいですね!」