ホームセミナーセミナーレポートオンライン公開講座 2021年7月15日

セミナーレポート

オンライン公開講座

人事部門に求められるデジタルトランスフォーメンション

株式会社パソナHRソリューション 取締役 副社長 執行役員 吉永 隆一
株式会社SmartHR 取締役 COO(最高執行責任者) 倉橋 隆文 氏
株式会社パソナグループ HR本部 副本部長
(兼)株式会社パソナHRソリューション 副社長 執行役員 河合 幹彦

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4月より展開している「DXと人事」を考えるシリーズプログラムの一環として、今回は「人事部門におけるDX推進を考える」公開講座を開催しました。人事DX推進のロードマップ、人事データ活用のゴールと実践方法、そして今まさにDX化に取り組んでいる生の実例を、パソナHRソリューションの吉永隆一、SmartHRの倉橋隆文氏、パソナグループの河合幹彦の3名が、それぞれ異なる立場から具体的な方法論を含め語り、意見交換を行ないました。

最初にまず、パソナHRソリューションの吉永から、人事DX推進を実現するためのロードマップを、人事業務のDXの実態と、人事DXを成功へと導くためのポイントを含め、お話致しました。
日本CHO協会が実施した事前アンケートでは「人事業務のDX推進に取り組んでいるか?」という問いに対し、約50%の会社が取り組めていないとの回答でした。「業務の効率化」「自動化」「属人化排除」という観点から、DX化を進めたいと多くの企業の人事は考えていますが、 データの一元化や、人事業務の可視化、そして依然として続くアナログ化に課題を感じているのが現実です。

これらを踏まえて、人事DXの推進は「意思決定分野」と「自動化分野」 という2つに分け、人事労務関連の定常業務の自動化から取り組むのが良いのではないか、そしてそのためには、以下の3つの見直しポイントを押さえて自動化を実現し、そして戦略人事へシフトすることが現実的なステップではないかと提案しました。
①クラウドシステムの導入
②データの一元化
③定例業務の軽減(外部の活用も有効)

次に、吉永が指摘した優先的に取り組むべき「自動化分野」で多くの実践事例を持つSmartHRの倉橋氏より、DXと人事データ活用のゴールとその実践方法を解説してもらいました。
労働力人口の減少による日本の中長期的な課題は「1人当たり生産性の向上」と「働きたいと思う環境の整備」であり、企業の置かれている課題も同じと言えます。1人当たり生産性の向上には、紙での業務のデジタル化から着手するのが良いでしょう。なぜなら確実に成果が出る課題であり、社会保険加入手続など目に見えて労働工数の削減に繋がるからです。
多くの人事部が「人事データ活用の重要性」を理解していても、どこにデータがあるかわからないという人事データの3大疾病(①バラバラ病 ②ぐちゃぐちゃ病 ③まちまち病)により、その活用が出来ていないのが現状です。その活用のためには、クラウド型のDXシステム等の導入により、人事労務業務の効率化を図り、実際の情報発生源で蓄積されていく人事データを、働く環境の改善に活かすことが大切です。これからは人に希少価値があり、人を制する企業が勝ち残るからです。

最後に、パソナグループの河合が、パソナグループにおけるシェアード化推進戦略とシステムの変遷、そして現在の取り組みを語りました。
「社会の問題点を解決する」を企業理念とするパソナグループですが、創業時からの人材派遣業を中心としたビジネスから、株式上場・持株会社設立を経て、M&Aを48社も実施してきた経緯があります。 過去3回に亙り、人事システムのリプレースを実施してきた際に意識した点は「常に先を見据える」ということであり、具体的には業務改善(固定概念の払拭と、属人化からの脱却)、他のシステムとの連携(会計・総務・インフラ環境等)、将来への環境変化対策(外販事業拡大、法改正への対応)等をひとつひとつ実施して来ました。昨年度からは、本社機能の一部を淡路島に移転するというビックプロジェクト下で、以下の4つのポイントを軸に現在も取り組みを推進しています。
①人材交流時の労務対応(社内外への出向・転籍時の対応)
②人事労務における「DX推進」の道筋(原本主義の多い行政手続の動向を踏まえる)
③法改正に対する対応(法制化の趣旨を捉えた実務判断)
④多様な働き方と人事労務管理(副業や個人事業主など、雇用の枠組みではない働き方もサポート)

3名のレクチャーの後、トークセッションと参加者の皆様からの数多くのご質問への回答も行ない、予定時間を30分延長し、全ての質問に対し回答やアドバイスを頂きました。 参加者の皆様には、DXの取り組みについての明日からの行動指針となるヒントをたくさん持ち帰って頂けたのではないでしょうか。

◎公開講座を終えて

  • 公開講座の内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    他社の人事が、DX導入についてどのフェーズにいるのか、何をDX化したいのか興味があったので、とても勉強になった トップの方々の大局から見た人事部におけるDXのあるべき姿は、私のような現場の社員に対しても、非常に示唆に富み、興味が湧く内容だった どこの会社も同じような悩みを抱えていることがわかった。今回のテーマは取り組みたくてもなかなか進められないジレンマがあるテーマであり、非常に役に立つ内容だった どの会社の担当者も同じ苦労をされていることや、そうした中でまずペーパーレス化や自動化など出来るところから着手することなど、たいへん参考になった 完璧な設計を求めず、スモールスタートで踏み切る勇気等、日頃思ってはいても、いざとなると出来ていないことを改めて実感した 当社では人事のさまざまなシステムが乱立しているのが気になっていたのだが、連携さえうまくいけば、それでも良い事がわかった DXの取り組みについて、他社の状況や、とりかかりやすい事例(紙媒体の電子化)を聴き、たいへん参考になった。システム間の連携や、既存の運用をどうマッチ(または変更)させていくかも、とても悩みどころかと思う。しかし、システムでどのように情報管理や制御していくかは今後の運用なので、過去の運用に縛られず、まずは今後を見据え、検討する視野を広げられるよう気を付けたい 後半のパネルディスカッションで、具体的なお話が伺え、より深く理解することができた。「最初から全てやろうとせず、まずは出来るところから」は、まさしくそのとおりだと思う。また、リモートワーク環境下の問題として、社員の声を拾う大切さについては当社も同じように痛感している 人事DXを改めて検討する良い機会になった。冒頭にお話し頂いたように、重要かつやるべきテーマであるものの、目先の業務に専念してしまい、後回しになっているのが当社の状況かと思う。いわゆる重要だが緊急ではないテーマにしてしまい、このままいくと経営層からの緊急の指示がない限り、月日が過ぎていき、取り残されてしまうことが懸念される 事例を紹介してもらったので、イメージが掴みやすく、社内説明にも即活用できると思った。今回のテーマは、もっと時間を取ってもらい、更に深く聞きたいと思った 自動化業務と意思決定業務に分けるという視点は、その通りだと思うので、これから整理を進めていきたい DXがテーマということで、最初から大変興味深く聴く事ができた。社内では、長期的な目的は共有できているものの、どこから取り組むべきかという点で、それぞれの思惑がずれることも多々あったが、今回の講演で多くのヒントを得ることができた 3大疾病ならびにDXが進まない弊害については非常に共感した。また、我々上層部がアナログで育ってきたため、リテラシーが低い事も弊害になっているので、アセットの補充なども検討したい 「紙での業務のデジタル化は確実に成果が出る」「出来るところからやる」「すべてをひとつにまとめると、逆に進まない」という3点が、とても印象に残った 現場はペーパーレス化が良いと感じているが、経営層の考えが変わらない限り、なかなかむずかしい 人事部門のDXとは、どの様なものかと考えていたが、先ずはペーパーレス化(申請時等からデータ化)し、更にどの様に一元管理するかということと理解した。但し、その次のステップとして、判断業務へのAI活用等が課題かと思う 人事業務を改善するため、クラウドを活用(組み合わせ利用)したいと思っているが、それぞれの分野ごとに多種多様なサービスがあり、選定がむずかしい。どのような視点で考え、検討し、組み合わせていくと良いのか、今後そのようなことがわかる機会があれば嬉しい 人事業務も幅が広いため、何か一領域に絞ってでも、電子化でどのような効率化が図れたのか、実現までのプロセスなどを具体的な事例で、もっと深くお話を頂けると良かった 人事が実際にDXに取り組むとなると、既存のシステムベンダーとの擦り合わせや、人事部内でのシステム移行など、課題は多い。次回は具体的にどのような方法で、他社が上記の課題をクリアしてDXに取り組まれているのかを聴いてみたい
  • 登壇者の感想は・・・

    パソナHRソリューション 吉永 隆一

    パソナHRソリューション 吉永 隆一

    「最後までたくさんの方にご参加頂き、ありがとうございました。多忙な人事の皆様の定常業務を少しでも自動化/BPO化して、創造的な時間を創り出すことが、人事DXの第一歩だと思っています。今後取り組む参考になれば幸いです」
    SmartHR 倉橋 隆文 氏

    SmartHR 倉橋 隆文 氏

    「参加頂いた皆様から、非常に多くの質問を頂き、改めて人事のDX や人事データ活用への関心の高さを感じました。高まる関心に応え続けられるよう、引き続きSmartHRの進化/改善への投資を強化していこうと改めて思いました」
    パソナグループ 河合 幹彦

    パソナグループ 河合 幹彦

    「参加者の方から様々な質問を頂き、ありがとうございました。人事の皆様のご苦労が改めて垣間見え、会社の中で苦労されている仲間と感じるひと時でした。このようなディカッションを通じて、解決へのヒントが少しでも見つかったならば幸いです」