ホームセミナーセミナーレポートオンライン公開パネルディスカッション 2021年5月26日

セミナーレポート

オンライン公開パネルディスカッション

変わる企業と個人の関係 ~働き方と組織の未来~

《パネリスト》
(社)Work Design Lab 石川 貴志 氏
(株)Another works 大林 尚朝 氏
(株)ハッカズーク 鈴木 仁志 氏
(株)ローンディール 原田 未来 氏
「退職学」研究者 佐野創太氏

《ファシリテーター》
(株)パソナJOB HUB 加藤 遼

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今回のパネルディスカッションでは、働く個人にとっての多様な価値観と多様な働き方、企業にとっての多様な人材の活用と多様な人材育成手法という、双方の視点からボーダーレスにテーマを掘り下げ、参加者の皆様に自社の人事政策のヒントを持ち帰って頂きたいと考えました。

冒頭にまず基調講演として、自らも大手事業会社に勤務をしながら複業として「働き方をリデザインする」をテーマにWork Design Labを主催する石川貴志氏に、「働き方の未来~出現する個と組織の新しい関係性~」をテーマにお話を頂きました。

休憩を挟んで引き続き、Work Design Labの石川氏に加えて、復業・アルムナイ活用・越境学習をテーマに4月度に3週連続で実施したトークセッションにご参加頂いた、業界のトップランナー4氏に再度ご登壇頂き、「ここまで進んできた!働き方と人材活用」をテーマに、最前線で起こっている取り組みと未来予測を、それぞれのお立場から語って頂きました。

以下は、その要旨です。

■働き方の未来~出現する個と組織の新しい関係性~ (Work Design Lab 石川 貴志 氏)

人事戦略と経営戦略の関係性が今まで以上に強くなってきている昨今、個人と組織に新たな関係性が生まれつつある。組織には個人の変化を理解し、新しい関係性を主体的に構築することが求められており、そのひとつとして組織の枠を超えて活躍する個人、即ち「複業人材」が寄与できると考える。

「複業人材」は、従来の「金銭的価値」を求めるワークスタイルとは異なり、自らのやりがいのため高いモチベーションで「非金銭的価値」を求める新しい働き方であり、人事部門としては複業によって個人が得た新しいアイデアをいかに組織に「再結合」するかが重要である。

複業を求める人材が出現してきた背景として、生産人口の減少による政府による兼業・副業の奨励、大手企業の副業解禁、生涯一社専心を想定していない若手社員の台頭など、様々な社会的要因が考えられるが、最も大きなインパクトはやはりビジネス環境の変化だ。産業構造の変化から、自社内のリソースだけでは課題が解決できない昨今、自前主義から脱却し企業や業種の壁を超えたプロジェクト型で課題を解決する。そのような環境変化の中から、即戦力となる多様な人材が存在する「複業ワーカー」という新しい人材マーケットが出現した。

Work Design Labが関わるプロジェクトは多岐に亙り、ワーケーション観光戦略等の地方自治体の課題解決や、地方の農業法人のマーケティングなど、地方企業関連のプロジェクトも増えつつある。そこでは「めざすべき未来社会」を考え、コミュニティを形成し、その活動から見えてきたことをプロジェクト方式によりチームビルディングしビジネス化し、課題を解決するという「バックキャスティング思考」が成功の基盤となる。
2020年からは「Work Design School」を設立し、全国地域と連携し「地域課題解決」と「人材育成」を同時に実現する体制も構築した。地域課題解決のプロジェクトは、基本的に複数名のチーム制で構成され、初めての人も「学習者」という立ち位置で、プロジェクトのサポート役として参加できる。今まで大企業で特定の役割を担当してきた人の中には、「自分の能力が果たして役に立てるのか?」という不安を最初に持つ人も多いが、チーム単位でプロジェクトに関わり、実際にメンバーが活躍する姿を見ることで「自分でもできる」と実感し、次のプロジェクトにはリーダーとなってもらう。このような仕組みが有効に働くのは、チーム単位で関わるというスタイルが大きなメリットだと考える。 首都圏に在住する「複業人材」を地方に呼び込むためには、その体験という「非金銭的価値」をどのようにデザインするかが重要であり、ローカル・コミュニティ・プラットホームの構築を通じて、地域独自モデルを構築し、関係人口の創出と増加を実現する。そうした動きが着実に増えてくる。

■パネルディスカッションを始めるにあたって (ファシリテーター:パソナJOB HUB 加藤 遼)

複業・兼業・リモートワーカー・プロフェッショナル・シニア人材、そしてワーケーションなど、個人が主役で才能をシェアする多様な働き方である「タレントシェアリング」という考えが浸透しつつある。

オフィスでのフルタイム正社員に始まるWorkstyle1.0から、リモートワーク/複業・兼業パラレルキャリアのWorkstyle2.0を経て、今まさに「所属」の自由度と、「場所・時間」の自由度を実現する「ワークスタイルトランスフォーメーション」が動き出している。多様な働き方が拡がる中、人事部門は現場管理職と人事部門が別のシステムを併用/運用する「ハイブリッド型」の人事エコシステムを並走させ運用する時代がやってくるのではないか。

■働き方の未来予測 2025年はどのような世界になっているだろうか?

後半のパネルディスカッションでは、最前線で活躍する5名により、実践に即した熱い議論が展開されました。そして最後には「2025年は、どのような世界となっているだろうか?」という問いに対し、パネルストの皆様から以下のようなコメントがありました。

Another Works 大林 尚朝 氏

複業マーケットには、ロート製薬の解禁から始まり、2年周期で大きな動きがある。2025年に向けては大手企業の複業解禁比率がどんどん上昇してくると思うが、そのためには、受入企業と解禁企業の最大化が必要であり、特に自治体や地方企業での最大化が必須だ。複業人材のマネジメントをコンソーシアム化し、全ての自治体と連携協定を進めていきたい。

ハッカズーク 鈴木 仁志 氏

2025年には、全ての企業が退職者に対するスタンスを明確にしていることが望ましい。アルムナイ活用も世の中の全ての企業が絶対にやらないといけない訳ではないと思う。副業を解禁しない会社もあって良いし、「当社は一生面倒見るので、辞めないでほしい」という強いメッセージを持つ会社があっても良い。個人の職業選択の自由が、名実ともに実現する社会をめざしたい。

ローンディール 原田 未来 氏

レンタル移籍は、年間100名ベースで活用が増えていくだろう。その結果、企業間の「境界線」が、今まで以上に溶けていき、個人は「自分たちの会社の存在意義って何だろう?」と考える機会が増えることは間違いない。だからこそ、企業のパーパス等を明確にし、個人と企業が互いにわかり合えるコミュニケーションを実現していく必要があるのではないか。

退職学研究者 佐野 創太 氏

従来のように、退職したら最後、もう会えない“今生の別れ”のような関係は減少し、個人と企業が何度でも「結び直せる」関係が増えていくのではないか。自律した個人は「社会の公器」となり、そのタレントをいろんな会社がいろんな場面で活かし、会社と個人が一緒になって社会を良くしていくような未来が実現すると素晴らしい。

Work Design Lab 石川 貴志 氏

これからは、自分自身が常に学び続けるスタイルの働き方が、とても大切になってくる。過去の経験のみに自らのキャリアの選択肢を狭めるのではなく、チャレンジしたいときに何歳からでも活用し学び続け、自分自身を変化させるような学校(コモンズ)が一般化している社会になってほしい。

◎パネルディスカッションを終えて

  • パネルディスカッションの内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    経験と実績や実例を豊富に持った登壇者の皆様から、ヒントとなる視点を数多く頂き、今後の社内展開の参考になった 今回のプログラムも、とてもとても面白かった。ここ最近は離職者が多く、社内のエンゲージメントを高める方法を模索中であり、「いやいや、そもそもそういうことじゃないんだ…」とか、いろいろと自問自答中だったので、是非参考にしたい テーマの設定から、登壇者の選定、ファシリテートに至るまで、大変良かった 実際に深くその道で事業を推進している方の話には具体性があり、たいへん参考になった 働き方の今後の変化についての最先端の方々の鋭い視点からのやり取りは、とても参考になった 組織から個に主体が移ると、「自分が何をしたいのか」が重要だと改めて実感した。学ぶことが多く、刺激になった こうした議論の内容は広く周知して、我が国の生産性や競争力の向上と個人の職業生活の充実や福利厚生の拡大に資することが重要だと思う。たいへん参考になった 副業、アムルナイ、レンタル移籍、それぞれの事業視点からの現状を、大変興味深く聞かせてもらった。離脱経験を経て、古巣に戻るとエンゲージメントが高まるというお話は、安心材料だと思った Work Design Lab 石川氏のお話が、たいへん勉強になった 副業をトライアル雇用に見立てて働いてもらうアイデアは、とても参考になった。今後は、社内副業や社内起業についての他社の取り組み等を是非聴いてみたい レンタル移籍をしてみたいと思った。当社は古い会社のため、社内の独自ルールがある気がしている。副業も禁止で、レンタル移籍も残念ながら申請が下りる状況ではなさそう。しかしながら、レンタル移籍できれば、他社をリアルに感じ、もっと効率化できる方法があるかもしれない パネリストの皆様ご自身が才気あるSuccessful entrepreneursなので、個人の選択肢の多様化にフォーカスしたお話しをされていたが、一方で多くの凡人は専門性を持っていなければ、そもそも多様な選択肢も活用できない。日本の労働市場は、人材流動化が不十分なため、個人も会社もその方向性がなかなか決められないのではないか
  • 登壇者の感想は・・・

    (社)Work Design Lab  石川 貴志 氏

    (社)Work Design Lab 石川 貴志 氏

    「パネリストの皆様からの最前線の情報や参加者の生の声を知ることができ、これから出現してくる『個と組織の新しい関係性』やその意味、またそこに至るまでの変化のプロセスについて、ぐっと輪郭がはっきりしたように感じました。引き続き、よりよい『個と組織の関係性』について実践・探求していきたいと思います」
    (株)Another works 大林 尚朝 氏

    (株)Another works 大林 尚朝 氏

    「複業解禁や複業採用は、これから重要な経営戦略になると思います。今回のディスカッションを通じて、複業人材登用における現場のリアルをお伝えできたと思っております。複業人材を採用するか否かという考えではなく、一歩進めて、複業人材を具体的にどこで活用できるのかを考えて行くことが重要だと思います」
    (株)ハッカズーク 鈴木 仁志 氏

    (株)ハッカズーク 鈴木 仁志 氏

    「弊社の取り組んでいるアルムナイなど、人事に関する施策やコンセプトは数多くありますが、これらは手段や醸成される文化であり、目的ではありません。それぞれの企業に合った、自社らしい『企業と個人の関係』に向き合われる中で、結果的にこのような文化が醸成され、施策が取り入れられれば嬉しく思います」
    (株)ローンディール 原田 未来 氏

    (株)ローンディール 原田 未来 氏

    「働き方の多様化によって、個と組織の関係は大きく変化しています。個人としても、組織を動かす人としても、一人ひとりが相手を尊重して関係を築いていけば、変化をポジティブなものにできるはずです。引き続き、皆さまと一緒に試行錯誤を続けていければと思います」
    「退職学」研究者 佐野 創太 氏

    「退職学」研究者 佐野 創太 氏

    「個人と組織の関係は、それぞれの企業が選べるようになっています。正社員以外の形である複業、退職後の関係を築くアルムナイ、自社の社員を外部人材化するレンタル移籍。縁の切れ目を意味した退職でさえ、その定義が変化しています。多様化する関係を皆様と目撃できることを楽しみにしています。2025年にまたお会いしましょう」
    (株)パソナJOB HUB 加藤 遼

    (株)パソナJOB HUB 加藤 遼

    「働く時間・場所・所属の自由度が高まり、複業やワーケーションなどの新しい働き方が拡がる中で、個人が自律的に仕事に取り組むことで、才能が開花していきます。企業が個人を活かし、開花した才能をどのように経営に活かしていくか。そして個人の才能を経営に活かすための人事とは何かという問いが生まれてきていると思います。タレンティズム(才能主義)の時代にシフトする中で、コアな経営資源になるタレント資産をどのように形成・運用していくのかという観点から、複業、アルムナイ、レンタル移籍などの方法を意味づけしていくことが、新たな経営戦略や人事戦略の策定・実行に繋がっていくと思っています」