ホームセミナーセミナーレポートトークセッション 2021年4月7日

セミナーレポート

トークセッション

働き方と人材活用/人材育成の最新事情
《第1回》 複業(副業・兼業)の未来

株式会社Another works 代表取締役CEO 大林 尚朝 氏
「退職学」の研究者 佐野 創太 氏

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3週連続開催するトークセッションシリーズの第1回目として今回は、1件ごとの紹介手数料や成功報酬はなく、月額利用料だけで何名でも採用可能な日本初の複業人材webプラットフォームを実現するべく設立された(株)Another works。
Netflixの複業採用版を目指しているという、同社代表取締役CEO大林尚朝氏に対して、退職学の研究者である佐野創太氏が、複業の現状と活用ポイントを様々な切り口からインタビューした1時間でした。
以下は代表的な質問と、大林氏からの回答の要旨です。

Q1.なぜ今、複業したい人材が増えているのか?

コロナ禍におけるワークスタイルの変化が一番大きい。一つの会社のみに所属することのへ不安と、リモートワークに移行し、通勤時間や移動時間が減ったことにより生まれた「可処分時間」の存在。そしてZoomやSlackなどのテクノロジーの普及が時間と場所の制約を無くし、外部人材の活用をやりやすくしている。

Q2.複業に関する個人の動きに、何か変化はあるのか?

金銭的な報酬よりも、「自分のスキルは社外でも通用するのか?」という想いからの挑戦意欲や腕試し志向が、複業へのチャレンジを加速している。失職するリスクなしに、今の環境を維持したままで、やりがいのあるミッションにトライできる複業は、個人にとって大きな魅力となっている。

Q3.一方で企業は、なぜ今、複業人材を活用したいのか?

スピード勝負のスタートアップ企業やベンチャー企業等では、正社員の採用には時間が掛かるし、なかなか難しい。それに比べると、必要なスキルと高いモチベーションを持つ複業人材を即戦力活用することは難易度が低く、今や当たり前になりつつある。また複業人材として、まずプロジェクトに参画してもらい、スキルや雰囲気など自社のカルチャーにマッチするかを見極めてから、正社員として採用できるという点も、もうひとつのメリットと言える。

大手企業では新規事業を扱う部署での活用例が多い。その理由としては、実績がない未知の事業分野に実績を上げているエース級の人材を異動させることが現実的には極めて困難であるという、大企業特有の課題がある。複業人材は、自らのスキルを試したいという高い意欲のある人材が多く、即戦力となる。また昨今では、複業の容認はむしろ、社員の離職防止にも繋がるという副次的な効果もある。

Q4.複業人材活用が成功する秘訣は?

ひとつは「コミュニケーションの平等化」。複業人材であっても、社内のプロパー人材と区別することなく「1on1」等を実施するなど、正社員とコミュニケーションや情報共有面での差を付けないことは、即戦力として活躍してもらうためには必須条件。
もうひとつが「仕事の要件定義の明確化」。採用する前に、どのような経験やスキルを、どのような部署で、どのように発揮してほしいのか?要件定義を詳細に亙り具体化・明確化しておくことが重要である。
“下請け的”に複業人材を活用するのではなく、あくまで仕事のパートナーとして接し、「なぜ複業にチャレンジしたいのか」「会社はどのような経験スキルを活かしたいのか」等、常にお互いにしっかりと摺り合わせをしておくことが、双方にとってのWin-Winな活用に繋がる。

Q5.複業人材に、これから選ばれる会社の特徴は何か?

先にお話しした成功の秘訣に加え、とにかく早期に実施することで、外部人材活用のノウハウを蓄積していくこと。「採用したが、マネジメントする人がいない」「具体的にお願いする仕事がない」などで、モラールが低下したり退職したりという失敗事例も、時々見受けられる。外部人材と共に仕事を進めることに少しでも早く慣れることが重要だと思う。

「このミッションを遂行するために、力を貸してください!助けてください!」というメッセージを素直に言葉に出来る会社は強い。複業人材に対して、どのようなサポートが喜ばれるのか、より力を発揮してもらえるのか?契約終了後も、いかに良い関係(=アルムナイネットワーク)を創れるか?そうした意識と行動が大切だと考える。

◎トークセッションを終えて

  • トークセッションの内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    複業について大変よく理解できた。当社では具体的な予定がまだないが、今後複業人材の登用に向けた議論を社内で進めていきたい 年代を問わず、副業・兼業の未来、企業と働く者双方にとってのメリットが整理できた。複業人材を活用したい企業には「その専門性が不足しているので、助けてください!」という姿勢が必要という言葉が、とても印象に残った キャリア自律意識の高い人材が、複業機会を積極的に求めていくことで、エンプロイアビリティを高めていく世界がすぐそこまで来ていることを実感した。しかしながら、大企業の人材抱え込みや、自社のカラーに染めようとする発想はそう簡単には変わらない。大企業側の現状打破に向けた取り組みをスピードアップしないといけないことを改めて感じた 思った以上に将来性の感じられる、かつ幅広い考え方で発展していく、人事としてのチャレンジ領域だと思った 複業に関する最新の現場情報が、とてもありがたい
  • 登壇者の感想は・・・

    Another works 大林 尚朝 氏

    Another works 大林 尚朝 氏

    「ご参加いただき、誠にありがとうございます。複業解禁や複業採用は、これから重要な経営戦略になるかと思います。複業人材を採用するか否かという考えではなく、複業人材を具体的にどこで活用できるのかを考えて行くことが重要だと思います」
    「退職学」研究者 佐野 創太 氏

    「退職学」研究者 佐野 創太 氏

    「正社員と複業人材の境界線はあいまいになる・・・。大林さんのこの言葉は、日本企業の人材観に変化が起きていることを示唆しています。「社内は家族、社外は敵」と区分していたような従来の日本企業は、「どこまでが社内なのか」を問い直す段階に入ってきたのかもしれません。複業が日本企業の進む道を照らす一助になれば幸いです」