ダイバーシティ&インクルージョンを成果につなぐ「心理的安全性」
株式会社ZENTech 取締役
一般社団法人日本認知科学研究所 理事
慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科研究員
石井 遼介 氏
昨今「心理的安全性」という言葉を目にする機会が増えてきました。「心理的安全性」の確保はダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)を進める組織にとって重要なファクターです。日本におけるD&I研究のトップランナーであり、ご自身も取締役として会社経営に参画されている㈱ZENTech 取締役の石井遼介氏をお招きし、心理的安全性とD&Iの関係を紐解いて頂き、D&I経営を円滑に進める上での重要ポイントを学ぶ機会としました。
冒頭で石井氏より、この「正解」のない時代に必要なのは「チームの学習」であり、チームの学習を促進するのが「心理的安全性」であると、心理的安全性を目指す背景とダイバーシティ&インクルージョン&ビロンギング(以下DIB)の関係性について解説して頂きました。それらを理解した上で次に、効果的なチームとなるために必要な「心理的安全性」をつくる「4つの因子」である「話助挑新」を、具体的な社内のコミニュケーションシーンを事例にご説明頂きました。
「話助挑新」とは ・・・ ①話しやすさ ②助け合い ③挑戦 ④新奇歓迎
心理的に安全なチームとは、いわゆる「ユルい」チームではなく、意見を言っても、助けを求めても、挑戦してみても、個性を発揮しても、安全なチームのことであり、その本質的な意味合いを理解することの重要性を、わかりやすくお話頂きました。
そして、チームの心理的安全性とはチームの歴史を背負った「結果・状態」であり、それをより安全な状態にするためには、ひとつひとつの組織・チームに応じて柔軟に対応できる心のしなやかさ、即ち「心理的柔軟性」が大切だと解説。心理的に柔軟であるためのポイントは、変えることが出来ない「心の中や性格」にアプローチすることではなく、変えることのできる「行動」に集中することだとの指摘を踏まえ、様々な体感型ワークを通じて、参加者一同は理解を深めました。また「リーダーシップとしての心理的柔軟性」に必要なポイントとして、以下の3点を示されました。
①必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる
②大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む
③それらをマインドフルに見分ける
その後、少人数でのグループディスカッションも実施しました。「チームを心理的安全な場に変え、ダイバーシティが機能する環境をつくる心理的柔軟なリーダーは、本日参加された皆様自身であり、祈っていてもチームは変わることはない」との石井氏からのメッセージに、参加者からは多くの共感と当事者意識が生まれ、率直な意見交換の場となりました。
◎研究会を終えて
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研究会の内容は参考になりましたか
(参加者アンケート結果から) -
参加者の意見・感想は・・・
普段、組織風土の改革等に取り組んでいるが、どこから手を付けたら良いか迷う事も多かったので、心理的安全性の高い風土づくりには、まずは行動にフォーカスするのが良いというお話しが特に心に響いた。本日ご教示頂いた内容を参考に、実践に取り組んでいきたい 大変貴重なお話だった。こういった内容に関心の高いメンバーや、意識が高く心理的安全性を理解し取り組めるメンバーは多くいる一方、まだまだ理解を得られないことが多く、ダイバーシティ推進に苦労する日々だが、今日の講演を受けて、やれることから取りかかりたい プレゼンにあった四象限の図で、生産性と心理的安全性の両方が高いところを目指すのが正しいという話を、社内に浸透させたい 自分自身、知識や先入観にとらわれないように・・・と意識してるつもりでも、自然とバイアスがかかっていることが多いので、「それはそうとして・・」と唱え一度立ち止まることを心掛けたい 全員の意識を変えるのはなかなか大変だが、心理的安全性のあるチームが沢山存在する、そして妥協点が高い、強い組織づくりを目指したい 安心して対話ができる心理的安全性の部分と、創造性やアイデアを生み出す信頼関係の2点/2層について、今後考えていきたい ダイバーシティの進んでいる環境下でも、成果を出すには心理的安全性が必要というお話は大変納得のいくものだった。すぐに社内で共有したい 実践が大事、行動に集中する、行動分析学等が石井さんのベースなのだなと感じた。当社でも出来るところから、行動フォーカスを意識して、やっていきたい 役員クラスに女性管理職を登用して行くための施策、D&I 浸透定着活動の効果的な打ち手、LGBTの社内・社外ガイドライン本等は読んでいたが、石井さんの生のお話で理解が深まった。心の中を変えていこうとするよりも、まず行動に注目する、というところがとても腹落ちした 別のイベントでも石井さんのお話を聞かせて頂いたが、今回も違う気づきがあった。「私たちは知識にすら騙される、あの人たち彼らはこうだという知識は目を曇らせる」という点は、「無意識バイアス」を意識させるために、必要なロジックだなと思った。またグループ討議での「チャレンジに対して罰を与えているのにチャレンジせよ」という点は弊社も含め、他企業の皆様もかなり共感しており、これが日本全体でそうなら、根深い話だなと感じた 当社ではD&I、特にインクルージョンに力を入れているが、その前段階として心理的安全が重要であることがよく分かった。組織に心理的安全をもたらすための具体的な手法など、さらに進んだ内容を、また開催してもらえるとありがたい もう1度、ストレングスファインダーを題材にして、チームの作り方、1on1の活用等、いろいろな展開例が聞いてみたい -
登壇者の感想は・・・
株式会社ZENTech 取締役 石井 遼介 氏
「ダイバーシティへの取り組みを行っていらっしゃる、組織や人事に関わる皆様にご参加頂き、感謝申し上げます。ダイバーシティを機能させ、成果に繋げるものが「心理的安全性」です。おひとりおひとりがリーダーシップを発揮して頂き、心理的安全で効果的な組織・チームづくりへと一歩踏み出して頂ければと思います」