急速に変化する経営環境は、人事方針や組織マネジメントに新たな挑戦を突きつけています。不透明な先行きの時代において、変化への迅速な対応には、多様性を活かした組織作りや人材育成が不可欠です。
しかし、DE&IやLGBTQ、エンゲージメントやキャリア自律、ハラスメントやウェルビーイング、DXやリスキリングといった新たな課題に次々と対応し、それを人的資本戦略の成果に結びつけることは容易ではありません。変革を実現する鍵を握るのは、人事部と現場の協業関係にあり、両者が手を取り合い粘り強く進むことが必要です。単に新施策について指示を増やすだけでは、人手不足の現場は、疲弊してしまうでしょう。
「人事施策や組織マネジメントの実効力を高めるための、何かシンプルで実践可能な考え方や取り組みは存在しないのだろうか?」今回の人事実践セミナーは、こうした疑問をお持ちの皆様に最適な内容です。
講師には、長年「人としての器」に関する研究を行い、その知見を人材開発や人事施策の構築に応用してきた羽生琢哉氏をお迎えします。本セミナーでは、「人としての器」を意識することが人事部の活動にどのように役立つのかを、具体的な研究成果や事例を交えながら解説いただきます。また、人事部で実践可能な考え方や方法論について議論し、参加者同士の交流を通じて理解を深める機会を提供します。
「人としての器」という表現は、古めかしいと感じられるかもしれません。しかし、近代以前、一山越えれば風習や言葉使いが変わる時代においては、地域を治めるリーダーは、内政や外交を通じて、領主としての器量を周囲に示すことが求められてきました。また、道教を説いた老子は、「聖人は器を見て官(国家)の長を任命し、画一的な制度で人を裁かない」と述べており、こうした人の器に関する考えは、日本土着の宗教である神道にも少なからず影響を与えてきたと考えられています。
「器」という、日本らしいリーダーの在り方は、2000年以上の歴史を重ねる中で、私たちのアイデンティティとして深く根付いてきました。そして、地域、世代、性別、業界・社風、さらには価値観の違いを包摂することが求められる現代社会こそ、「人としての器」を適切に示すことが求められる、まさに重要な局面に立っていると言えるでしょう。
本セミナーでは、「人としての器」とは何か、器を大きくするための条件とは何かについて解説し、組織の器を広げるために人事部に求められる在り方とはどのようなものか、過去の研究や実践面の応用事例など参考となる情報が得られます。人事部の役割やリーダーシップの在り方を学ぶ貴重な機会となるはずです。ぜひご参加ください。(参加費無料)
【プログラムのご紹介】
【ご講演】「人事部に求められる「人としての器」 ~器の大きな組織を目指して~」
- 株式会社人としての器 代表取締役 羽生 琢哉 氏
【登壇者のご紹介】
株式会社人としての器 代表取締役 羽生 琢哉 氏
- プロフィール
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人事分野の専門誌「労政時報」編集者を経て、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)博士課程を修了。
博士(システムデザイン・マネジメント)。大学院在学中に「人としての器」研究チームを結成し、2024年に法人設立。慶應SDM特任講師、筑波大学働く人への心理支援開発研究センター研究員を兼任。「若者離職と人事部との関係性」に関する修士論文で最優秀賞、2020年度人材育成学会奨励賞。 - メッセージ
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「組織はトップの器以上にならない」といわれるように、人は“器”に例えられ、様々なものを“受け容れる”在り方の重要性が語られてきました。そこで、「人としての器」という言葉に着目して行った私の研究では、器の概念は「感情」「他者への態度」「自我統合」「世界の認知」の4つの領域で捉えられることがわかりました。 つまり、器の大きい人とは、感情面で活力があり、多様な他者に寛容で、自分らしい信念を持ち、広い視野を持つ人を指します。
この考え方を人事施策や組織マネジメントに応用することで、優秀な社員の離職、管理職不足、シニア層の活躍推進など、現代企業の課題を根本から見直すことが可能になります。これらの課題の背後には私たちの器の限界が潜んでおり、そこに真摯に向き合うことで、人事部や組織全体の器を大きくすることにつながり、多様な価値観を受け入れ、困難を乗り越える力が培われるのです。
一方で、企業では目先の成果が優先され、対症療法に追われるあまり、器を育む機会が失われがちです。だからこそ、器を磨き、広げる意義を改めて考える必要があります。器を深く理解し、新たな器づくりを進めることが、ウェルビーイングやキャリア自律など人的資本経営の実現にもつながるでしょう。
今回の機会を通じて、「器」の考え方を軸に個人と組織の方向性を見つめ直し、いかに人事部が器づくりを先導して実践できるかを皆様と共に探求していければと思います。
【開催日時】
2025年2月21日(金) 14:00~16:00
【参加にあたってのお願い】
本セミナーは、Zoomを活用したオンラインセミナーです。
講演とグループ討議を取り入れたワークショップスタイルで進行します。
当日は、ネットワーク環境を整えた上で、ご自身の音声(できれば画像も)が出せる状況でご参加ください。